本番 ページ27
当日。日が照りつける中、ギリギリの確認や直前にしかできない設営でてんやわんやしていた。
「7番のコードが足りてないです！倉庫にあるので…」「18の照明が入らないから確認してきて」「左袖の固定の補強が…」
スタッフと書かれたTシャツを着た人々が走り回っている。勿論、私も例外ではない。
「3nって書いてある段ボール取ってきてくれない？機器類も入ってるから丁寧にね」
「はい！」
袖の近くにあるというのでステージを見ることができるのではないか、なんて考えつつ段ボールを探していた。
てっきり屋内だと思っていたのだが袖横の扉から出て外にあったらしい。探すのだけで大分手間取ってしまった。
「あ…！」
目的の段ボールを見つけた、が。
しかし、きっと私に頼んだ人は位置まで把握していなかったのだろう。していたとしたら頼まないだろうと思ったからだ。何故なら…
「と、届かない…」
いや、もしかしたら頑張れば届くかも、と思い背伸びをするが届かない。追記するならば周囲に踏み台になりそうなものも見当たらない。
何かを引っ掻けて落とそうにも大事に扱えって言われてるしなぁ…。
しかし急がなければ迷惑になってしまう。ここは諦めて届かなかったと伝えに…伝えられるだろうか？悩んでいると、後ろに気配を感じた。
「ったく、いっつも言ってんだろうがよ。テメ〜は他人に頼ることをもう少し覚えやがれ」
私の背後すぐ近くから腕が伸びてきて耳元に聞き慣れた声がする。一瞬ではあったが背中に晃牙の体温が触れた気がする。
そこから暖かくなったような気がするのはきっと熱気のせいだ。
ほらよ、と渡されたそれに改めて背が高いな、なんて場違いな感想を抱く。
ありがとう、とお礼を言うとすぐさまそっぽを向いてそのままリハへと戻ってしまった。
アイドルに手をかけさせてしまうようなプロデューサーじゃ、まだまだ駄目だなと一人で反省をしつつ中々に重量のある箱を持って戻った。
私はこのとき気が付かなかった。
私がかけたのは手だけでなく迷惑でもあったと言うことに。
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作者名：ぽあぷるーじゅ。 | 作成日時：2018年2月12日 13時
