となりの翔太くん。 (ページ19)

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そして少しの沈黙のあと、彼が言う。

渡辺「…ごめん」

『え…？』

渡辺「あのときは、ごめん。今さら許してもらえるなんて思ってないけど、全部俺のせいだ」

『…覚えてるの？』

渡辺「はっきりと覚えてる」

私の顔は忘れてたのに、なんて言おうとして、やめる。

渡辺「俺が軽率だった。お前の気持ちをもっと考えてやれてたらよかった」

…まさか、彼の口からそんな言葉を聞くなんて。

渡辺「本当に、ごめん」

彼は頭を下げる。

『翔太くん…大人に、なったんだね』

渡辺「…まあな」

『確かに、私はたくさん傷付いたし今でも許せない』

渡辺「もちろん。今日Aを介抱したのだって、その罪滅ぼしのつもりなんかじゃない」

『でも…私にも少なからず原因はあったのかな、なんて思う』

私は我慢ばかりしていて、ちゃんと思いを伝えたことはなかった。

渡辺「A…」

『でもやっぱり、翔太くんのことは嫌い』

渡辺「いいよ、それで」

そんな彼を見て、私は思わず笑う。

『…むかつく(笑)』

渡辺「ふはっ(笑)」

彼も笑う。

『なんだかお腹空いてきちゃった。何か買ってきて』

渡辺「お前調子のんなよ」

『えー』

あ、なんだかこの感じ懐かしい。

少しだけ、あの頃に戻ったような気がした。

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