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プロローグ ページ1

 
 
 
 
 
 
いつだっけ。遠い昔のようなこと。

思い出せる、けれど薄ぼんやりとしている。









俺は少しイラついていた。前の授業で当てられ続けたせいで。


正答が欲しいなら一ノ瀬に当てとけよ。そしたら一発で答えてくれっから。



脳内で愚痴を零しながら自販機の前に立った。




「チッ、コーヒー売り切れてる……」





キュッ




すぐ後ろで鳴った、上履きの音。




「お疲れ」



「一ノ瀬……!?」



「休憩も必要だよ。はいこれ」




手渡されたのは、俺が買えなかったコーヒー。

あっさりしすぎていて腹が立つ。




「……俺、ちょっと驚いたんだよね。
いかにもふわふわしてそうな夏川が舌打ちとか、新鮮」





顔色も表情も全く変わらない一ノ瀬。


……………本当に新鮮って思ってんのか??





「俺に夢見すぎじゃねーの?」



「そうかも。もっと天然だと思ってた」



「ふわふわしてんのは顔だけな」




相変わらず一ノ瀬の表情は変わらない。

俺はコーヒーの缶を開けて、中身を啜った。





「俺もそのコーヒー好きだよ。ほろ苦くて美味しいから」



「え、甘くね??」



「え“っ」




このコーヒーは微糖。完全なブラックではないため、苦いことはないと思ってる。


……それより、俺が初めて見る一ノ瀬の驚いた顔。いつもの能面のような表情じゃない。

こんな表情をするなんて意外だ。




まぁ、その顔も数秒で終わってしまったが。





「あ、休めた?」



「おかげでね。サンキュ、一ノ瀬」



「ん、じゃあね」





一ノ瀬はヒラヒラと手を振って、教室へ戻っていった。無表情で。









そうだ。確か、ここから始まった。



高校最後の一年、俺は一ノ瀬と一緒にいる時間が長かった。

………その原因の一つが、彼の表情筋を動かしてやろうと決めたこと。

生徒手帳 夏川響→



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ろぐ(プロフ) - 大手裏剣さん» ありがとうございますっ……部活が思いの外忙しくてなかなか更新できていませんが完結させる予定なので、応援して頂けると嬉しいです(´∀`) (2020年7月30日 23時) (レス) id: 094eb64ef2 (このIDを非表示/違反報告)
大手裏剣(プロフ) - わ〜とても雰囲気が好みです…。執筆頑張って下さい…! (2020年7月30日 12時) (レス) id: fe109e5f3f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろぐ | 作成日時:2020年7月18日 23時

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