ワガママ (ページ36)

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＿＿岸

ゆ「ごめんね。汚くて」

岸「いや、俺も急にごめん」

岸「あ、手伝う！俺！」

ゆ「いいわよ。お客さんなんだから。座ってて？」

岸「·····そっ、か、ありがとう」

「全然」なんて微笑みながらお茶を入れてくれるゆきこさん

慌てて車を飛び出したからマスクしかしてなくて

さすがに外じゃまずいからと家へあげてくれた

変わってねーな

広々としたリビングを見渡してあの頃が蘇る

今座っているソファに着いている淡いシミ

あ、これAとジュース取り合った時こぼしたんだっけ

壁に飾られている上手とは言えない似顔絵

描かれている2人は手を繋いで笑っていて、その下に

"Aとゆうた"

歪みまくった字で書かれている

ゆ「懐かしいわね。あの絵」

岸「お茶ありがとう。·······ね。」

ゆ「········よく、気づいたわね。私って」

岸「そりゃ気づくよ。ゆきこさんだし」

ゆ「·········そう。」

少し空間を開けて隣に座るゆきこさん

微笑みながらもその笑みはなんだか哀しみで溢れていて

ももの上に置かれている両手は強く握られていた

岸「···········なにが、あったの？」

ゆ「··········ｯ、」

岸「········どうして、連絡取れなくなったの？」

こんなゆきこさん見て聞かない方がおかしいだろ

いいよ。この際、しつこい男でも。

悲しそうなゆきこさん見る方が、倍辛いんだよ。俺。

岸「····A、だよな、」

ゆ「········」

岸「···ｯ、ゆきこさん！」

ゆ「·········ｯ、、優太、」

岸「······ん？」

ゆきこさんは意を決した目でこちらを向いた

そして、

ゆ「·········あの、ね、＿＿」

岸「·········ｯｯ！！」

気がつけば真っ暗な部屋の前

電気を付けると、先程までいたとことは真逆で散らかっている部屋

何故か入口から動けなかった

手には数字が並べられているメモ帳

岸「·······ｯ、ごめｯ、ごめんｯ、、」

知ってしまった

全部を。真実を。

そして、全てが頭の中で繋がった時

俺は泣き崩れることしか出来なかった

手にあるメモ帳は既にぐしゃぐしゃ

そのメモ帳はゆきこさんにとって、

紫耀へ宛てた精一杯の"気持ち"だったのだと思う

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