ワガママ (ページ12)

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＿＿岸

それから半年経ったくらいだと思う

「俺たち、付き合うことになった」

岸「····················え、」

真っ直ぐ俺を見る紫耀と、少し頬を紅く染めたA

遡ることつい一週間前、紫耀に突然

"「来週、あそこのカフェで話したいことあって」"

と、仕事終わりに言われて、

今日そのカフェに行くと紫耀の隣には幼なじみがいた

その時点で何となく察したけど

いざ言葉で伝えられると、

『え、ちょっと！優太？！』

「え！岸くん？」

岸「······いや、あの、ごめんｯ、」

「·········あの、岸くん、俺、」

岸「違う！紫耀、違うからｯ！」

紫耀はきっと俺がAを好きだと勘違いしてる

それはずっと、はじめからなんとなく分かった

だからこの涙が悔しさからきてると思ってる

岸「なんか、すっげー嬉しくてさ、」

「··········え？」

岸「······紫耀、Aのこと、」

本音を言えばAのこと一度は好きになった

中学のとき告白して付き合ったけど、幼なじみ感が否めなくて結局今までの距離感の方が俺達には合ってるってなって戻った

今はそんな気持ちは微塵もないけど

でも、俺じゃ、幸せに出来なかったんだ

よく笑って、その分怒って泣いて、よく喋って

自分よりも他人を優先する思いやりがあって

でも内面は意外と打たれ弱い女の子

俺の大切な、たった1人の幼なじみであり大切な人

紫耀になら、

いや、紫耀だからお願い出来ると思った

岸「··············頼んだぞ！」

「······うん。もちろん。絶対幸せにするから」

『········ｯ、絶対！紫耀のこと幸せにするからｯ！』

岸「いや、なんで泣くんだよ！」

「あーあー泣かない笑」

『だって優太がーｯ！』

岸「·················あの言葉、嘘だったのかよｯ、」

あの日、幸せな日に流した嬉し涙は

3年後の今、悔し涙に変わったんだ

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