〜44話〜 ページ45
丸窓が、波風で揺れる音に目を覚ました。
ゆっくりと体を起こすと肩に掛かっていたシーツが滑り落ちる。
「いない…か」
大きな空間を目にしながら呟く。
冷たくなったシーツを撫でながら、激しく求め合った夜の事を思い出す。
好きなのに、この愛を伝える事も出来なかった。
昨夜だけは、私を見ていてくれた。
私だけを。
ポロポロと、小雨が降る様に目から涙が零れ落ちる。
拭う事も面倒でそのまま頬を伝わせて丸窓から見える外を眺めた。
「痛いな」
愛の無い行為は、こんなにも心が痛いのか。
ヤソ「よォ 珍しく遅起きだな」
「たまにはこういう日もあっていいかなって」
食堂で武器の手入れをしているヤソップさんの隣に座る。
ルウ「ブルーベリーパンで良いか？」
「あー‥‥ジャムだけ貰って良い？」
ルウ「はァ？」
滅多に眉間を寄せないルウさんの眉間に皺が寄る。
ヤソ「どうした」
「あんまりお腹空いてなくて」
――――――――バンッ！
目の前に、瓶一杯に入ったブルーベリージャムが置かれる。
ホン「やるが目が赤い理由を説明して貰おうか」
ルウ「ホンゴウ」
ホン「誰だよ お前を泣かしたやつ」
「これは昨日読んでた本がすっごく感動して泣いたんですよ」
瓶を手に取り、蓋を開ける。
ホン「さっきなんでお頭の部屋から出て来たんだよ」
「その本はお頭の部屋に置いてあったんですよ」
行儀悪く指先でジャムをすくい口に入れる。
ホン「A本当の事を何で話してくれないんだよ 俺達家族だろ」
ベック「A」
食堂の入り口にもたれているベックさんに名前を呼ばれた。
「はい」
返事をすると、メモを一枚差し出されるので受け取りに行く。
ベック「頼めるか」
「行きます」
ホン「おい！A 話は終わってねェぞ！」
「お頭とシたの それで体が重いの」
食堂の端で騒いでいた船員が静かになる。
ホン「まじで…か」
ヤソ「ルウ 今夜は宴だ！」
「辞めて！…そんなんじゃないから」
瓶片手に、食堂を出た。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2022年9月17日 23時
