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「そうかい。」
Aはそれだけ言うと、もうその少年から離れていった。
彼の明るい瞳を見るのが苦しくなって
自分を見るその真っすぐな心が悲しく見えて
なんだか自分が愚かに見えて
___逃げるように、その場から離れていった。
*
それからAには様々な出会いと別れがあった。
妻と出会い、二人の子供ができた。
家族を養う為に売れない画家をやめることにした。
普通の貿易関係の仕事に就き、そのままゆっくりゆっくり歳をとった。
二人の子供が大人になり、家を出て行った頃に、Aは仕事を辞めた。
妻が得意をしていたパスタなどの料理店を開くことにした。
二人の料理店は評判が高く、すぐに人が集まった。
*
それからある日。
もう若い頃の面影のない老人のような見た目のAは今日も料理店の店長として客を迎え入れていた。
従業員も大分増えて、老体であろうと無理はしなくて済む。
このまま自分の人生は終わるのだろう、と心のどこかで思いながら…
「ヴェー!ここだよ、今話題のお店!」
頭にこびりついて離れなかった、あの気の抜けた声。
Aはハッとして、入り口の方を見た。
「…貴方は…」
あの時の青年が、そのままの姿でそのままの声で立っている。
隣には兄らしき青年も…
「あれ?おじいさん、もしかして俺のこと知ってるの?」
「…君はヴェネチアの時の彼の息子さんか孫かい?少女の絵を描いていたあの…」
ゆっくり、ゆっくり夢のような気分で歩む。
「違うよ?あれが俺なんだ!」
きょとんとした顔で青年は答えた。
「…?」
*
「だから、俺は国なんだよ。兄ちゃんと二人合わせてイタリア。つまり、おじいさんの祖国なんだよ!」
席に着いた青年が話したのは、彼らの生きている理由についてだった。
「…はあ。」
非科学的な話だ。
この世に年をとらない人間が存在するとは。
「そうかい…なんだか、納得したよ。」
あんなに絵が上手かった理由も、あんなに笑っていられた理由も。
「ねえねえ。おじいさん。」
「なんだい?」と聞くと、青年は笑顔で
「俺、おじいさんの絵が見たいなぁ!」
Aはそっと。そっと廊下に出て行った。
古い倉庫には、ずっと眠っていた若き日の思い出。
そっと老人は筆を走らせ、それを見る青年二人。
今日だけは。
この日だけは、Aはあの頃の純粋な画家になっていたのだ。
ただ絵を描くことだけを愛した、あの日々に。
「さあ、できたよ。」
画家、Aの新作は美味しそうなパスタの絵。
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ミファ(プロフ) - エリジャさん» ありがとうございます! (2017年4月25日 21時) (レス) id: 9307a90a97 (このIDを非表示/違反報告)
エリジャ(プロフ) - ミファさん、こんにちは。イベント参加ありがとうございます!!読ませていただきましたが…ぶ、文才が凄すぎる………すごく上手いですね!!これからも頑張ってください!応援しています!! (2017年4月25日 21時) (レス) id: 3c22eecada (このIDを非表示/違反報告)
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