8 ページ10
*
全然痛くない。
「ひっ、お姉さん大丈夫?」
「お、お姉さんはへ、へ、平気」
腕の中にいる男の子の声にゆっくり目を開ける。私は男の子を抱いていて、そして私は誰かに抱かれていた。
顔を上げればそこにいたのはイヌピーではなくて九井くんで。私に怪我も痛みもないのは彼が私を守るようにして、バイクの走行から守ってくれたからだった。
「う、うそ……」
「ココ!A!」
イヌピーの声にすぐに起き上がる。男の子は泣きながら「ごめんなさい」と何度も謝った。九井くん全然動かない。
どうしよう、九井くんが、し、真一郎の時と同じだ。
「九井くん、起きて………!」
「………」
「………九井くん!九井くん!」
打ちどころが悪かったのか揺さぶっても起きなくて思わず涙が出てきてしまう。うう……とポロポロと泣いていると「煩ぇなぁ」とムクリと起き上がった九井くん。
そして私の顔を見て、彼は目を見開き手を伸ばすと「泣かないでよ赤音さん」と呟いた。
「…………え?」
「あ、いや……」
「………私、赤音じゃないよ」
そんな私を無視して、彼は男の子に「気をつけろよ餓鬼」と頭を撫でくり回すと歩いて行ってしまう。取り残された私とイヌピーはその後ろ姿をただただ眺めていた。
九井くんは何故か私のことを嫌っている。何かしたのかなとずっと思っていた。けれど、さっきの優しい目と声でなんとなくわかったような気がした。
「イヌピー、赤音さんって誰?」
「………………」
イヌピーをじっと見つめていると、彼は私とは視線を一度も合わせずに「……俺の姉貴」と呟いた。なるほど、イヌピーにはお姉さんがいるのか。
けれど、なぜ私のことを九井くんとイヌピーは"赤音"さんと時折呼ぶのか。
「…………Aは、俺の姉貴によく似てるから」
.
692人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちえ - 私の最推しのイヌココが出た時はギャーギャー叫ばすにはいられませんでした (2021年11月2日 18時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 更新ありがとうございます!!!あああもう好きっっ (2021年10月12日 23時) (レス) @page37 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
チョコプリン(プロフ) - 更新ありがとうございますぅぅやばいです!ようやくデレ九井くん登場でドキドキが止まらないのともう場地さぁぁぁんって気持ちで溢れて続きが気になりすぎます!!!、 (2021年10月12日 22時) (レス) @page37 id: e53e09d499 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 場地さんんん切ねぇ😭更新お疲れ様です! (2021年10月9日 22時) (レス) @page27 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - うわぁめちゃくちゃ続き気になるっ更新お疲れ様です! (2021年10月9日 17時) (レス) @page25 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美桜 | 作成日時:2021年10月3日 14時