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「うぇ、ありがたい……!」
転校してきてからというものの、授業の進行速度が違くて前の学校ではまだ習っていないことも先に進んでいた。分からなくて頭を抱えていると、イヌピーがノートを貸してくれた。
「優しいねイヌピーは」
よしよしと思わず頭を撫でてあげる。
そしてハッとした。万次郎やエマたちをよく撫で回しているからついやってしまったが、同級生にされても嬉しくないだろう。
けれど、イヌピーは嬉しそうに顔を綻ばせていた。イケメンが微笑むとカッコいいね、不良だけど。
「イヌピー!帰んぞ!今日集会あんだろ!」
「えっ!今日も集会?!私も行く!」
万次郎にこの前のお詫びを渡さないといけないの。
カバンを持って彼らのところに走っていけば、九井くんに「てめぇは来るんじゃねぇよ」と睨まれた。思わず後ずさって息を呑む。
転校してきてわかったことがある。
イヌピーは優しいイケメン不良。そして一方、九井くんには何故か絶妙に嫌われている。イヌピーに近づけば何故か猫の威嚇みたいに睨まれるし、さっきみたいに万次郎に会いに行こうとすると吠えられる。
「私何かしたかな」
「………ごめん」
そして毎回彼に変わって謝ってくるのがイヌピーだった。謝らないでと苦笑いを浮かべる。イヌピーはまた「ごめん」と謝った。私には知らない何かをイヌピーは知っているということなのかな。だけど、他人の私には知る権利はきっとなくて。
「なんで着いてきてんだよてめぇ!」
「私帰り道こっちだから」
キョトンと九井くんを眺めれば、彼は一瞬固まってから顔を逸らして大股で歩いていく。
横断歩道の前に来ると、向こう側から男の子が走ってきた。元気だなぁと思っていれば、その子は信号を見ずに横断歩道を走ってくる。
「………え」
すごいスピードで走ってきたバイクに思わず走り出して「危ない!」と叫んで男の子に手を伸ばした。絶対痛いだろうなって目をぎゅっと閉じた。
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ちえ - 私の最推しのイヌココが出た時はギャーギャー叫ばすにはいられませんでした (2021年11月2日 18時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 更新ありがとうございます!!!あああもう好きっっ (2021年10月12日 23時) (レス) @page37 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
チョコプリン(プロフ) - 更新ありがとうございますぅぅやばいです!ようやくデレ九井くん登場でドキドキが止まらないのともう場地さぁぁぁんって気持ちで溢れて続きが気になりすぎます!!!、 (2021年10月12日 22時) (レス) @page37 id: e53e09d499 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 場地さんんん切ねぇ😭更新お疲れ様です! (2021年10月9日 22時) (レス) @page27 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - うわぁめちゃくちゃ続き気になるっ更新お疲れ様です! (2021年10月9日 17時) (レス) @page25 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作成日時:2021年10月3日 14時