44 ページ46
*
久しぶりに見た九井くんは、私の前にきた。
涙でぐしゃぐしゃの顔を見て「ブスだな」と言う。
「…………失礼、な……っ」
九井くんは私の首に触ふれて「深くねぇな」と屈んでは背中に乗れと指示した。震える足を立たせて背中に腰を下ろせば、九井くんは立ち上がって「痛くねぇか」と歩いていく。
痛くない。だって九井くん助けてに来てくれた。痛みよりも会えた嬉しさで今はいっぱいなの。
コンビニに立ち寄って、絆創膏と消毒液を買ってきた九井くんは軽く切れた首の手当をしてくれた。明日病院ちゃんと行けよ、と添えて。
「………九井くんが連れて行ってよ」
「…………」
「ねぇ、何その特攻服。なんで東卍の着てないの?」
私の質問には何も答えない。
九井くんがわからない。結局私は九井くんの心の内には入れなかった、と言うことだろうか。
「最近は万次郎も圭介もみんな難しい顔してる。……三ツ谷なんてブロックで頭殴られて襲われたって聞いたし」
「………………」
「そんな危ないところに九井くんはいるんだね」
私じゃ止められないのわかってる。
けどさ、止められたら私って九井くんにとってそう言う存在になれてるってことなんだよね。
「やめようよ。九井くんが心配なの」
「…………」
「好きだから」
きっかけは最悪かもしれない。
けれどさ、今じゃもう九井くんしか目に入んないの。
「俺を買えよ。そしたらやめてやる」
「いくら?」
「1億」
「私貧乏だから持ってないなぁそんなお金」
イヌピーの言う通りだった。九井くんにとって大切なものは乾赤音とお金だ。
「その顔、赤音さんそっくり」
酷いね、九井くん。
ポロポロと涙が流れる目を上から手で塞いだ九井くんは、そっと私の口に自分のを重ねた。キスと思った時に腹部に強烈な痛みを感じて意識を失う。
目が覚めた時、私はイヌピーの家にいた。
彼は心配そうに私を見ていて、ありがたかったけどせめて絞ったタオルを額に乗せて欲しかったかな。顔濡れてんだけど。あと熱じゃないんだよね。
「ココが連れてきた」
「…………ほんと出会った時からずっと最悪」
.
692人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちえ - 私の最推しのイヌココが出た時はギャーギャー叫ばすにはいられませんでした (2021年11月2日 18時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 更新ありがとうございます!!!あああもう好きっっ (2021年10月12日 23時) (レス) @page37 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
チョコプリン(プロフ) - 更新ありがとうございますぅぅやばいです!ようやくデレ九井くん登場でドキドキが止まらないのともう場地さぁぁぁんって気持ちで溢れて続きが気になりすぎます!!!、 (2021年10月12日 22時) (レス) @page37 id: e53e09d499 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 場地さんんん切ねぇ😭更新お疲れ様です! (2021年10月9日 22時) (レス) @page27 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - うわぁめちゃくちゃ続き気になるっ更新お疲れ様です! (2021年10月9日 17時) (レス) @page25 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:美桜 | 作成日時:2021年10月3日 14時