こっち向いて、私を見て【九井一】

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なんでこの高校2年生という時期に転校なんてしなきゃ行けないんだ。しかもまだ修学旅行に行ってないのに、次の転校先は既に終わっていると言うじゃないか。



「悔しい……っ！」



その新生活を送るべく転校先の学校に行く前に、いとこの家へとご飯をたかりにきた。「落ち着いてAちゃん」と私を宥めながら朝ごはんを出してくれるエマに「高校生活の醍醐味なのに！」と悪態をつく。


ひぇぇんと泣いていると「おはよう……エマ……じいちゃん……」とちっこい男の子がやってくる。ちっこいといっても中3だし、むしろ無敵のマイキーなんて恐れられてるけど。寝起きは本当中学3年生の可愛い男の子。



「え、A来てたの？」

「うん。それより顔洗ってきなさい」

「………うん」



未だに起きていない頭で、洗面所に向かっていくマイキーこと万次郎を眺めつつ「まだアレ持ってるんだね」と呟いた。


エマが何度も処分しなさいと言っているらしいが本人が俺の命と言って捨てないそうだ。喧嘩がめちゃくちゃ強いけれど、心は弱い男の子。



「ねえA、彼氏出来た？」

「うるさい」

「Aってさ、見た目可愛いのに性格が残念だから出来ないよね。直せば？」



万次郎には言われたくない。

見た目がふわふわしていて女の子らしいとよく言われる。けれど、喋ると何故かいつも残念だと言われる。



「いいの！いつか見た目も中身も愛してくれる王子様が現れるから！」

「そう言うところだよ。高校生になって王子様とか痛いよね。ね、エマ？」

「ちょっと！私にふらないでよ！」



そこはあえて「私も同感」って答えてくれるとお姉さん嬉しかったな。朝食のパンを齧りながら、新しい学校への道順を地図を見て確かめた。



「そういえば制服新しくなってる」

「Aちゃん家引っ越したってこの前話したでしょ！何にも聞いてないんだから」

「そうだっけ？」



セーラー服からブレザーに変わった制服に、にこりと笑う。万次郎が「へぇ似合ってるね」と鼻で笑ったが触れないでおく。



「新しい高校では彼氏作るから」

「喋んない方が出来ると思うよ。Aは特に」

「お姉さんを敬え、年下よ」



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