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しばらく不穏な空気になったが私が面白い話をして場を変えた。面白い話と言ってもこの前合コンに行って完敗した話だけど。
「九井くん、万次郎にみっともないなんて言ったら殺されちゃうよ」
「煩えな、てめぇこそ満更でもねぇ顔しやがって」
「小さい頃から万次郎ああだったもん慣れたよ」
それに私は万次郎といとこだから。
これが他人だったら流石の私でも叫ぶよ。
「ムカつくんだよ」
「はい?」
「てめぇのその顔も、声も、瞳も、全部!!」
大きな声にびっくりした拍子に後ろに下がる。そうすると、段差に気づかないで足が宙を踏む。割と高い段差に、「あ、」と思わず呟けば、九井くんが手を引っ張って助けてくれる。
勢いよく引っ張られた私の体はすっぽりと彼の腕の中。結構いい匂いしてるんだな、と思っているとギュッと抱きしめられて思わず、へ?と声が出る。
「……………なんで俺の前に赤音さんの姿で現れたんだよ」
苦しそうな声で弱々しく言うもんだから、思わず彼を抱きしめ返してしまった。君は本当に赤音さんが好きで大好きで堪らなかったんだね。死んだ今もなお、九井くんに愛されている赤音さんはどんな子だったんだろう。
「(…………なんだかいいなぁ)」
弟にいつまでも大切にされて、年下の男の子にここむで愛されている赤音さん。なんでだろう、彼女がとても羨ましく感じてしまう。
「私は九井くんが知っている赤音さんじゃない」
「………………」
抱きしめられていた私の体を九井くんは剥がすように両手で突き放す。ちょっと目が赤くて、涙目になっている九井くんの目の下に触れた。
わかってんだよ触んなと手を払われてしまう。けれどごめんね私はそれでもやめない。
「九井くん、こっち向いて、私をみて」
「見たくねぇんだよ。目障りだ。どっか行け」
目障りって言われても、赤音さんに似ているって言われても。私はこの顔を変えることなんてできない。死んだお母さんが産んでくれたこの顔に誇りを持って生きているの。
「赤音さんに似てるのはイヌピーだけで十分だった。なのに、全部そっくりなお前が現れて、俺を掻き乱しやがって」
「九井くん、お願い私を見て」
睨むように私を見た九井くんに、にんまりと笑った。
「私は佐野Aだよ、九井くん」
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ちえ - 私の最推しのイヌココが出た時はギャーギャー叫ばすにはいられませんでした (2021年11月2日 18時) (レス) id: 0560ab194e (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 更新ありがとうございます!!!あああもう好きっっ (2021年10月12日 23時) (レス) @page37 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
チョコプリン(プロフ) - 更新ありがとうございますぅぅやばいです!ようやくデレ九井くん登場でドキドキが止まらないのともう場地さぁぁぁんって気持ちで溢れて続きが気になりすぎます!!!、 (2021年10月12日 22時) (レス) @page37 id: e53e09d499 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - 場地さんんん切ねぇ😭更新お疲れ様です! (2021年10月9日 22時) (レス) @page27 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
ATR214YS(プロフ) - うわぁめちゃくちゃ続き気になるっ更新お疲れ様です! (2021年10月9日 17時) (レス) @page25 id: 5cda5f5352 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作成日時:2021年10月3日 14時