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「こんにちは」
頭を下げて挨拶をした。
五条家にきたのはそう久しぶりでもないし、数日ぶりと言ったところで。腕の中にある悟くんの許嫁の写真にぎゅっと力を込めた。
『僕に代わってその縁談、断っておいで』
悟くんにそう言われた。
悟くんからお父様に断ってくれる方が少しか楽だけど、私から断るのは少し気分が乗らない。だって、悟くんのお父様、怖いんだもん。基本的には優しい人だけど、悟くんに怒っている姿は怖かった。随分と昔の記憶だけど、覚えている。
「ーーーそれで、どうだった?」
「……それが、」
緊張して手が震えた。
悟くんは使用人である私に心を開いているから私から頼めば快く引き受けると思い込んでいる彼に、今からその逆のことを伝えなければならない。
「無理だと言われました……」
「何?悟の奴め、わがままがすぎるな」
「Aが話せばうまくいくと思ったが、」とポロリと零された言葉に緊張の糸がさらにピンと張った。断った後ってどうすればいいんだっけ。静寂が響いて、喉を鳴らすことすら躊躇う。
悟くんのお父様は、大きなため息をついて「仕方あるまい。こっちで勝手に進めさせてもらおう」と立ち上がった。"勝手に"という言葉が、頭を反芻する。それは悟くんの意思は関係なく、親の都合で勝手に結婚させるということ?
悟くんが、誰かのものになってしまう。
そんな焦りから、「あ、あの!」と声をあげていた。私に向けられた視線。「なんだ問題でもあるのか?」という冷えた声色に、どうしようと息を呑んだ。
「なんだ?悟が結婚すれば君はもうアイツの使用人を辞められるんだ。今までの好き勝手なわがままから解放されるんだぞ。嬉しくないのか?」
私は何度も悟くんの使用人を辞めたいと思った。それは、彼の目に使用人ではなく一人の女として見られたかったから。
悟くんのわがままなんてもう慣れっこ。
散々言っていたわがままも今はなく、むしろ「もっと欲張れ」って私に甘えて来いと言ってくるぐらい。
「私、ずっと悟くんの使用人を辞めたかったんです。母が使用人をしていたから成り行きで私も彼のそばについていました。わがままで横暴だけど、悟くんのそばにいるのが好きでした」
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沙羅(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます(^ω^)長い間読ませていただきました。番外編楽しみにしてます!甘々な展開、期待しております! (2021年4月19日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
踊る宝石(プロフ) - はじめまして!本当にこの作品大好きです。番外編がこれから少しあるんですかね?更新楽しみにしてます! (2021年4月19日 1時) (レス) id: 7183f6d526 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美桜さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年4月14日 21時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
飼口(かいぐち)(プロフ) - 一人称が僕になってる…!てことは夏油はこのときにはもう…? (2021年4月13日 21時) (レス) id: 57441fdd79 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美波さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟でお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしてます。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年4月4日 19時