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まさかこんな形で悟くんに知られてしまうなんて思わなかった。悟くんの手には、例の許嫁の女性の写真。見るからに怒っている悟くんはサングラスをベッドに投げて、そのあおい瞳で睨んでくる。
「……これは、悟くんのお父様から預かったもの、」
「へぇー、なんて言ってた?」
「悟を説得しろ、と」
視線を逸らして、正直に話した。
先日、五条家に行ったこと。悟くんには黙っていた。呼ばれたとなると理由を聞かれるのは分かりきっていたから。そして、そこで悟くんに、許嫁の話を私から彼にするように命じられたこと。
悟くんは静かに私の話を聞いていた。
後何を話せば良いんだろう。この重い空気から抜け出せるんだろうか。
「………とても、素敵な女性だよね」
「は?」
「私なんかと違って、お似合いだと、思うよ」
口から出た言葉がとんでもないことだと思った時には遅かった。悟くんに腕を思いっきり引かれた。痛かった。ベッドに押し付けられた手は、悟くんに強く拘束されていて、びくともしない。
彼の瞳に私が映り込んだ。
怒り、嫉妬、軽蔑、呆れ。どれでも当てはまりそうな瞳の色。
「それ本気で言ってんの?」
私みたいに何も持っていない普通の人間が、五条家の次期当主と言われている悟くんとお似合いだと言われることは絶対ない。本来、悟くんのお父様にだって「一般人と釣り合うわけがない」と言われたんだ。
私がでしゃばって、悟くんの彼女ですなんて言ったところでどうなるのか。
それでも、悟くんを他の人に取られたくない。
「…………はぁ。Aはさ、説得するも何も頭悪いんだし、どうせ僕を取られたくないから最終的に泣くのが落ちでしょ」
「…………っ」
「実際もう泣いてるんだし」
掴まれていた腕を解放してくれた悟くんは私を抱き起こして、頭を数回撫でた。視線を合わせて、悟くんの膝の中にいる私に、彼は「そもそも僕、A以外の女抱くつもりないんだけど?」と私の髪をクルクルと触り始めた。
だらしなく鼻をすすり、涙を流す私は「ごめんなさい」と何度も謝った。悟くんにはどうやら全てお見通しだったらしい。
「まあ確かに、胸はAより大きいけど、僕手のひらに収まる程度がちょうどいいと思うんだよねぇ」
「……触んないで、」
「えぇー、せっかくホテル入ったんだしさ」
涙を拭いて悟くんに抱きついた。
悟くんは「甘えたさんだね」と笑って落ち着くまで背中をさすってくれた。
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沙羅(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます(^ω^)長い間読ませていただきました。番外編楽しみにしてます!甘々な展開、期待しております! (2021年4月19日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
踊る宝石(プロフ) - はじめまして!本当にこの作品大好きです。番外編がこれから少しあるんですかね?更新楽しみにしてます! (2021年4月19日 1時) (レス) id: 7183f6d526 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美桜さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年4月14日 21時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
飼口(かいぐち)(プロフ) - 一人称が僕になってる…!てことは夏油はこのときにはもう…? (2021年4月13日 21時) (レス) id: 57441fdd79 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美波さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟でお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしてます。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年4月4日 19時