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落ち着いた私に、彼は頭をかきながら「つーか、久しぶり」と呟いた。あぁ、そうだ。あの日から2ヶ月近くたっているんだった。
「ひ、久しぶりです」
「まあ、なんだ。無事で良かったわマジで」
ホッと一安心したように息を吐いた悟くんに小さく頷いた。
しかしながら、あの日、悟くんの手を振り払い、しかも声を荒げてしまった上に「もうやだ」なんて呟いて彼の前から逃げてしまった。完全に気まずい雰囲気。
そんな私だけが感じている雰囲気をぶち破ったのは隣にいる悟くんだった。「そ、仙台のめちゃくちゃうめぇ菓子買ったんだよなー。食う?」と紙袋を手に取った。
「A、ずんだ好きだろ?」
「う、うん」
「ちなみに俺も好き」
私がずんだを好きになったのは悟くんの影響なんだよ。そんなことを今口には出来ないけれど、楽しげに紙袋を開く悟くんに、口元は自然と綻んでいた。
ずんだ生クリーム味のお饅頭を私の手に乗せた彼。
ありがとうとお礼を言って二人で並んで食べた。
「悟くんってさ、私にお父さんがいたの知ってる?」
「聞いたことはなかったけど、水瀬さんの指についてたからなんとなくは知ってた」
「…………私のお父さんね、今日いたアレと似たようなのに殺されたんだ」
「は?」
涙が溢れた。
ちょうど4歳。お父さんに甘えん坊だった私はお父さんに抱っこされていつものように公園をお散歩していた。お父さんの隣にはお母さんがいて、お母さんが少し目を離した時のことだった。
お父さんはアレに殺された。血飛沫が私の頬に飛び散った。息をしないお父さんに「ぱぱ?」と呟いた私を母は抱き抱えて走り出した。
「お母さんが五条家の使用人になったきっかけは、私とお母さんを助けてくれた悟くんのお父様への恩返し」
「……マジか」
「私はずっとお父さんとの記憶を失くして、いた」
あんなにも大好きだったお父さんのことを10年以上も思い出さなかったなんて。私を守って死んだお父さんを。
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沙羅(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます(^ω^)長い間読ませていただきました。番外編楽しみにしてます!甘々な展開、期待しております! (2021年4月19日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
踊る宝石(プロフ) - はじめまして!本当にこの作品大好きです。番外編がこれから少しあるんですかね?更新楽しみにしてます! (2021年4月19日 1時) (レス) id: 7183f6d526 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美桜さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年4月14日 21時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
飼口(かいぐち)(プロフ) - 一人称が僕になってる…!てことは夏油はこのときにはもう…? (2021年4月13日 21時) (レス) id: 57441fdd79 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美波さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟でお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしてます。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年4月4日 19時