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あれが何なのか悟くんは話してたくれなかった。
悟くんにはたくさん怒られた。なぜここに入ってきたのか、なんですぐに逃げなかったのか。俺がいなければ死んでいた、と。
「悟、くん」
「………」
ポロポロと涙を流した。
悟くんは小学生の頃から私の涙に滅法弱くなっていた。他の子が泣いていても、何の干渉もせず、めんどくせぇと無視するような人なのに、私が流すときだけは違った。
彼の黒い制服を掴んだ。
欠損していた記憶と存在。今までお父さんはいないと思っていた。そうじゃない、私には大好きなお父さんがいた。だけど、ある日私の目の前でお父さんは殺された。
この建物にいた存在に似た何かに。その当時、お母さんに抱き抱えられ、お母さんは逃げていた。それを助けてくれたのが、悟くんのお父さんだった。
「私、今までどうしてお父さんのこと忘れてたんだろう」
「…………」
主人の服に、シワをつけるなんて使用人として失格だ。ましてや涙のシミをつけるのも大概。
抱きしめられた、悟くんの腕に。
悟くんは、何も言わず、まるで子供をあやすかのように背中を優しく叩いてくれた。
「み、水瀬」
しばらく、悟くんの胸を借りていた私は落ち着いて、悟くんの隣に座っていた。そんな私のところにきた二宮くんに、泣いている顔を見られたくなくて、悟くんの影に隠れた。
「悪ぃけど、Aは修学旅行早退させっから」
「………お前はアレがなんだったのか知ってんのか?」
無言は肯定。
悟くんは「後でコイツの荷物取りに行く」と言うと、私を隠すように盾になってくれた。彼に手を引かれて、歩いていく。夏油くんが待っているホテル。そこにつくと、夏油くんが美味しいお茶を淹れてくれた。
彼は気を利かせると、部屋から出ていく。お茶を口にしながら、隣に座る悟くんに「悟くん」と話しかけた。
「このホテルってすごい高いところでしょ?………しかもスイートルーム……」
戸惑う私に、彼は「高専からの援助」と学校負担で宿泊していることを教えてくれた。
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沙羅(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます(^ω^)長い間読ませていただきました。番外編楽しみにしてます!甘々な展開、期待しております! (2021年4月19日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
踊る宝石(プロフ) - はじめまして!本当にこの作品大好きです。番外編がこれから少しあるんですかね?更新楽しみにしてます! (2021年4月19日 1時) (レス) id: 7183f6d526 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美桜さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年4月14日 21時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
飼口(かいぐち)(プロフ) - 一人称が僕になってる…!てことは夏油はこのときにはもう…? (2021年4月13日 21時) (レス) id: 57441fdd79 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美波さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟でお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしてます。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年4月4日 19時