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悟くんと夏油くんはそう言うと中の方に入っていった。私は、悟くんの言う通り、中に入りたくなかった。本能も、入るなって言っていたの。
「入るなって言われるほど入りたくなるのが人間の性ってやつよね」
「だな」
同級生はそんな好奇心から、ゾロゾロと中に入っていった。同じように、何かあるんじゃと二宮くんも入ろうとする。
止めようと腕を掴んだら、彼は「水瀬も行こうぜ」と今度は二宮くんに腕を掴まれ、中に無理やり入らされた。
怖かった。悟くんがあれほどに怖い顔で入ってくるなと言ったこの建物の中が。入った瞬間に鼻につく重いナニか。頭が、記憶が、揺さぶられるような感覚。
「………私、昔お母さんと同じように大好きな人がいたの」
「どうしたんだ、急に」
「………わかんない。この重たい空気に、何か思い出しそうになって、」
いつもべったりとその人に甘えていた。「将来大きくなったら___と結婚するの!」とその人に抱っこされていた私は言っていた。
とるあ部屋に入った皆が、その場に倒れた。私だけが立っている。さっきまで私の手を掴んでいた二宮くんも同じように、地面に倒れた。二宮くんたちの影になって見てなかったそれが姿を見せる。
「…………オ、オ"トウ……サ、ん"」
「……え?」
私には欠損した記憶ととある人の存在がある。
お母さんはなにも言わなかった。ただ貴方にはトラウマがある、それだけしかか言わなかった。
もしもまた同じようなトラウマに出会うことがあった時、もしかしたらその欠損した記憶も存在も思い出せるかもしれない。
吹き抜けた強い圧。頬をかすったそれだけなのに、頬には切り傷ができて血を垂らしていった。悟くんの言う通り、ここに入るべきではなかった。
「A!!こっちに来い!!」
背後から聞こえてきた悟くんの声に、振り向いて地面を蹴った。手を伸ばすと、悟くんはすぐに私の手を取り引き寄せる。守るように、私を抱き寄せた悟くん。
『俺にとって、お前は使用人の娘でも、特別だから』
『特別?』
『そ。数少ない俺の特別な人間な』
小さい頃、初めて私を抱きしめたあの意地悪な悟くんを思い出した。
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沙羅(プロフ) - お疲れ様でした!完結おめでとうございます(^ω^)長い間読ませていただきました。番外編楽しみにしてます!甘々な展開、期待しております! (2021年4月19日 22時) (レス) id: f64d60a5d5 (このIDを非表示/違反報告)
踊る宝石(プロフ) - はじめまして!本当にこの作品大好きです。番外編がこれから少しあるんですかね?更新楽しみにしてます! (2021年4月19日 1時) (レス) id: 7183f6d526 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美桜さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟オチでお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年4月14日 21時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
飼口(かいぐち)(プロフ) - 一人称が僕になってる…!てことは夏油はこのときにはもう…? (2021年4月13日 21時) (レス) id: 57441fdd79 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 美波さん初めまして、この小説は五条悟オチですか?できれば五条悟でお願い出来ますか?続き頑張って下さい。応援してます。楽しみにしてます。 (2021年4月6日 18時) (レス) id: 8685377221 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年4月4日 19時