弟の想い人に恋をしたはなし【不死川実弥】

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「どうして？……私、実弥と関わるようになって毎日楽しかった。それは私だけじゃないって思えてた、実弥は違うの？」



きっと今の私は涙を流していることだろう。
流れているそこだけが冷たく感じる。何度も振り払われそうになる腕を、がっちりと掴んで離さない。


私はただ自惚れていただけ？優しくしてくれるのも、キスしてくれたのも、全部実弥は私のこと好きでいてくれているんだって。そう思っていたのは私だけなの？



「私、実弥が好き。ずっと好きだったの」

「…………………」



何も感じられない瞳の彼を一心に見つめて、振り絞った声で伝えた。「大好き、」と震えた言葉が喉を通り、下を向いてしまう。


実弥の口元が僅かに緩んだのが見えた。優しく私の腕を下ろすその手に、再び顔をあげると、冷たく見下ろす彼と目があった。自分でも顔が硬っているのがわかる。表情筋が硬く怯えている。



「お前が俺を好きでいようが、俺はお前にこれっぽっちも恋愛感情は持ってねぇ」

「……………」

「勘違いして俺のこと好きになってんじゃねぇよ」



こんな実弥、私は知らない。

せっかく綺麗にメイクしなおした顔は涙のせいでグジャグジャだ。そんな私なんてお構いなし。実弥は冷め切った笑顔を向けると、私の肩を強く引き寄せて耳元に口を寄せた。



「恋愛感情一切なしの、体だけの関係ならなってやってもいいぜ」



ホテル行くか？と言う彼に、すぐに実弥の体を押して離れた私は、彼の頬を打っていた。周りの人達が驚いて見ているがそんなの知らない。赤くなった頬に手を当てることすらしない実弥は私を見下ろした。



「…………………っ」



鞄に付けた彼から初めてもらったマスコットのキーホルダー。それを外すと彼の胸に押し付けた。「さようなら」と必死に別れを告げた私はすぐに背中を向けた走り出した。




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冷たい風が頬に当たって痛い。

途中転んで着ていたタイツが破けてしまう。赤い血が出てくる最中、私は地面の上で拳を作った。



「……………っ」



悲しい感情が支配する。
泣きたくないのに涙が流れていく。


どうして……と嗚咽混じりに吐き出した私の言葉は夜の空に消えていく。



「(悲しい顔して、言わないでよ……っ)」



あの顔を見て、私に言った言葉全てが嘘であるということに気がついた。




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