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「だからそこは違うって……。ここをここに代入するの」
耳に横髪をかけ、少し前のめりになった彼女が俺の数学のプリントの数字の上に指を滑らせる。わかりやすい説明に頷きながら、集中した表情を何度も盗み見した。
「………玄弥、聞いてるの?」
「き、聞いてる!」
集中していなかった俺に、Aは頬を膨らませる。珍しい表情に、ドキッとしつつ「悪い悪い」と宥めた。
教材を両手に持ち、次の講義室に二人で移動する。
隣を歩いていると、匂ってくる柔軟剤の香りと髪から匂うシャンプーの匂い。香水を一切使っていないらしい彼女からはいつも良い匂いがしていた。
「(…………最近、さらに可愛くなったよな)」
軽く巻かれた長い髪が揺れている。
いつも見ているから、可愛くなっていく様に気づいていた。よくスマホを見ては、嬉しそうに頬を緩めている。
好きな男でも出来たのだろうか。考えたくもないし、そんな話を仲間内でも聞かないから、そうではないと信じている。Aのスマホの通知音が2回鳴る。何故かスマホを出して確認しない。
「LINEの通知音鳴ってっけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
講義室に入り、Aは女子の隣に腰掛ける。Aから少し離れた場所にいた伊之助の隣に教材を置くと、暫くAを見つめていた。
椅子に腰掛けて、すぐにスマホを鞄から出したAは隣の女子にスマホを覗き込まれて何か言われているようだった。顔が真っ赤だ。「ち、違うよ!」とここにまで聞こえてくるほどの声量で何かを否定していた。
「お前ほんと水瀬のこと好きだよな」
「は?!なんでお前知ってんだよ!つーか、水城な」
「お前講義中もセンコーの話よりアイツ見てんじゃねぇか。誰だって気づく」
出会って2年ちょっと。俺はずっと、水城Aという女の子に恋をしている。
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青子(プロフ) - もう、切なくて胸が痛いです…更新楽しみにしています!!よろしくお願いします!! (2021年1月24日 9時) (レス) id: 32fb39756e (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - めーこさん» コメントありがとうございます!そうだったんですね、、出してからちょっとしたころに勝手に消えちゃって再上げしたんです、、また出会ってくれてありがとうございます、、まだ続く予定なので最後までご愛読お願いします! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 菜一郎さん» コメントありがとうございます!映画館のくだり〜!ありがとうございます!!キュンとくるようなエピソードこれからも入れるよう試行錯誤練ってみます!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - *カフェオレさん» コメントありがとうございます!単純なのでそう言ってもらえてうれしいです、私も好きです!! (2021年1月23日 23時) (レス) id: d3adf571e3 (このIDを非表示/違反報告)
めーこ(プロフ) - 初めまして!初コメです!以前読んでて突然消えてからずーーーーっと気になっててまた出会えたことに感謝感激雨あられです!更新頑張ってください!陰ながら応援してます!! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 2c11b94916 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美桜 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/ririsa10713/
作成日時:2021年1月14日 18時