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「やっぱAはそうなんだよなー」


嶺亜くんは半分呆れたような声で言った後にわたしの顔を覗き込んできた。


「あのさ。普通は‥たいていの女の子はもっと計算するんだよ。

自分が損しないためにはどうすればいいか

傷つかないためにはどうすればいいか

優しくしてもらうにはどうすればいいか

好きになってもらうにはどうすればいいか、って」

「そうなの?」

「あとたいていの女の子はあれしてほしいこれしてほしい、こんなことしないで、とか言う」

「あ、あるよ!それは」

「何?」

「付き合ってない女の子、家に入れるのやめてほしい‥」

「あとは?」

「お酒飲み過ぎないで」

「それから?」

「夜ぐっすり眠ってほしい」

「他は?」

「ちゃんとご飯食べて」

「‥やっぱりお前俺のお母さんなの?」

「違うけど!」

「けど?」

「‥健やかに生きてほしい‥」


ずっと願っていたその言葉を口に出したら、今まで我慢していた涙が一気に溢れ出して止まらなくなった。


涙が胸に詰まって苦しくて。

それを払おうと息をするたび、また勝手にぽろぽろと頬に涙が伝った。


「泣いてんの?

今までどんなに振り回してもキツいこと言っても泣かなかったのに。

何泣いてんだよ‥」


嶺亜くんはわたしの泣き顔を隠すように自分の胸の中にわたしの頭を押し込めた。


嶺亜くん‥


しゃくりあげるわたしの背中をトントンとなだめる嶺亜くんの手は優しくて。あったかくて。

それを感じたらまた泣けてきてしまう。




「大丈夫。生きてるよ。ちゃんと。

健やかに‥かどうかわかんないけど」


優しい、優しい声。



その声にますます涙が溢れて止まらなくて。

わたしは何も言葉に出せなくて嶺亜くんの胸の中でぷるぷると首を振った。




「‥じゃあA、見張っててよ。

そんな風に、なれるように」



わたしは止まらない涙をどうすることも出来ないまま、嶺亜くんの胸の中でただ頷いた。




嶺亜くんの心の部屋に幸せのあかりが灯ることを何よりも願いながら。

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りぷる(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます♡楽しみにしていただいてるとのお言葉、とても嬉しく舞い上がっています(照)拙いお話ですがまた読んでいただけると嬉しいです! (6月28日 2時) (レス) id: fcab587f4a (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - いつもお話楽しく拝見させていただいてます。毎回の更新が日々の楽しみです!これからも主様の素敵なお話読むことが出来ることを楽しみにしています(*^^*) (6月28日 0時) (レス) @page4 id: 90b9db811a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りぷる | 作成日時:2023年6月21日 20時

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