検索窓
今日:1 hit、昨日:62 hit、合計:24,393 hit

....... ページ29

「なんか俺、かっこ悪いな」


胸の中で聞く嶺亜くんの言葉に、わたしはぷるぷると首を振った。


「Aには泣いてるとこも見られたし‥

不機嫌な顔してあたったりしてさ。

かっこ悪いとこ見られてばっか‥」



わたしはそろそろと顔を上げて、嶺亜くんの顔を見つめた。



少し伏せたまつ毛の先に光が灯ったように見える。

白い頬。

小さく言葉を紡ぐ唇は、柔らかな曲線を描いていた。



綺麗な人‥。

見た目だけじゃなく、心も。



憎まれ口のような際どい冗談は、きっと周りの人に笑ってほしいから。

強がりも、無理するところも。

傷ついた自分の気持ち誤魔化すようにいつも笑っているけど、

誰よりも繊細で。誰よりも真っ直ぐで。



「かっこ悪くてもかっこいいよ、嶺亜くん」

「なんだよ、それ。笑」


嶺亜くんは片方だけ唇の端を上げてちょっと笑って。

それからゆっくりとわたしの髪に触れた。




「もう誰のことも大事に思いたくないって思ってたのに、

もう誰のことも好きにならないって、ずっと決めてたのに‥

好きになっちゃった‥」



嶺亜くんは、また目を伏せて、わたしの頬を撫でた。


消え入りそうな声。

少し冷たい指先。



嶺亜くんへの愛しい気持ちが込み上げてきて、わたしは今まで言えなかった言葉をようやく口に出した。



「嶺亜くん‥好きだよ‥」

「知ってる。笑」


意を決して言ったつもりが、ふいにいつものように悪戯っぽく笑われて、なんだか力が抜けてしまう。


「またそういうこと言う‥」

「‥知ってるよ。

Aがずっと俺のこと好きでいてくれたのも

一生懸命俺のこと守ろうとしてくれたのも

全部知ってる」


真っ直ぐにわたしを見る嶺亜くんの瞳に、わたしが映っているのが見えた。

初めてこのマンションに来た時には見えなかった、わたし自身。


「嶺亜くん‥大好き‥」

「ん‥」


わたしは嶺亜くんにギュッとしがみつくようにしながら、今まで言えなかった言葉を何度も口にした。


その度に嶺亜くんが照れたように頷いてくれるのが嬉しくて。


何度も。

........→←......



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (96 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
227人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

りぷる(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます♡楽しみにしていただいてるとのお言葉、とても嬉しく舞い上がっています(照)拙いお話ですがまた読んでいただけると嬉しいです! (6月28日 2時) (レス) id: fcab587f4a (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - いつもお話楽しく拝見させていただいてます。毎回の更新が日々の楽しみです!これからも主様の素敵なお話読むことが出来ることを楽しみにしています(*^^*) (6月28日 0時) (レス) @page4 id: 90b9db811a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:りぷる | 作成日時:2023年6月21日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。