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KIMATA side
Aはいつでも明るくて、元気で
あったかくて、愛しくて、でも少し弱くて、人気者で
人間味があって飽きないAが俺にとっては憧れだった。
見ていて、辛くなってしまうくらい
Aが弱々しくなっていったのは
汐恩を失って、白岩と出会ってからだ。
木「Aはさ、今楽しい?」
「ん?うん、楽しいよ。友達もできてきまちゃんもいる。」
木「木全はさ、昔からAと仲良くて、Aの色々見てきたけど、今辛そう。」
Aと電話とかカフェとかでたわいもない話は良くしてて、もちろん、恋愛の話もしてて。
なにがあったのかわかんないけど、
とても辛そうで。
「振られた。…って、直接言った訳じゃなくて、」
ここ最近あったこと、全部聞いた。
奨くんにいえなかったおもいは飲み込んで
微かに芽生えはじめた汐恩への想いを育てる
…Aは、それで本当にいいのだろうか。
いざ、弊害があると、自分から身を引いてしまうから、その友人が近くにいるからと今回もそう諦めてしまうのか。
…汐恩からしたらいいだろうし、これが分かってたんだろう。
木「Aは…」
「…ん?」
木「…泣いていいよ。そうするなら。」
言いかけてやめた。Aが汐恩を選ぶために
場所と空間が欲しいなら、僕がそれになるよ。
「きまちゃんは…やさしいね。」
「分かってくれてありがとう。きまちゃん」
木「…いいよ、おいで?」
「…ありがとう。」コトッ
日が沈む水平線を見ながら、
肩に少しだけ重さを感じて、
ただ、波の音に耳を澄ませる。たったふたり
今は僕達だけの世界で。
汐恩の家のこともあるから、
だから早く決めなきゃとずっと思って動いてたのに
いつも真っ直ぐで僕から見たら歪んでる汐恩に
きっと揺れてたんだろう?
知らないことは知らなくていい。
ただ、Aが幸せになってくれたら
それでいい。
この時間が甘くて好きだと
酔いしれている僕のことも知らなくていい。
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作者名:かきのたね。 | 作成日時:2020年4月5日 1時