9☆寿視点☆ ページ14
俺はなんて馬鹿なことをしたんだろう。
寿は部屋の壁にもたれかかって深く溜息をついた。
軽い気持ちで平成に行った俺のせいで、
あんな所に狭間を放置した俺のせいで、
刀剣男士に暴力を振るっていた昔の俺のせいで。
もう人を不快にさせるようなことは一切しないと師匠達に会ったその日、心に決めたはずなのに。
また皆に迷惑を掛けてしまった。
この五年間の日々は、昔の埋め合わせだと思っている。
今まで他人に味あわせてきた不快感に対しての埋め合わせ。
自分の今している数々の『善』も、全て恩返しの為だ。
例えば万屋。
株で儲けている額に比べれば、万屋の給料なんて雀の涙程度だ。
しかしバイトを辞める気はこれっぽっちも無い。
十二歳の頃に、万屋で万引きをしたことがある。
しばらくはバレていなかったのだが、ある日店主に万引きするところを見つかってしまった。
しかしその店主は自分の貧相な身なりを見て悟ったのか、自分から目線を外して、あたかも何も見なかったかのようにその場から去って行ったのだ。
人里からかなり離れたところにある万屋。儲かる商売だとは到底思えない。
しかし、店主は万引きを見逃した。
その事をきっかけに、成長した俺は万屋でバイトを始めたのだ。
店主は今でも万屋でしっかり働いている。
しかしもう年なのか、重いものを運んだり、高いところの商品を取ったりすることが困難になっているようだった。
だから俺は、店主に自分の手を差し伸べた。
あの時、全てに飢えていた自分にそうしてくれたように。
そうやって、この五年間で自分の存在する意義を見出してきた。
それなのに今はどうだ。
政府を怒らせて、関係のない師匠に謝らせて、Aの家にずけずけ入り込んで、また沢山の人に迷惑をかけて。
そんな自分が情けなくて仕方がない。
突然、ポケットの中の端末が振動した。
電話だ。
寿「…もしもし?」
歌仙『もしもし、主?話は聞いたよ。大丈夫かい?』
今日の端末当番は歌仙である。
寿「あんま大丈夫じゃねぇ…」
歌仙『かなり落ち込んでいるようだね…まあ仕方ないか。本丸の皆も心配しているよ』
寿「…ふーん」
歌仙『近々政府の役人がうちの本丸に来るらしい。何かしておくことはないかい?』
寿「特に、無いんじゃねぇの」
歌仙『分かった。…あまり気を追い過ぎては体に毒だよ。おやすみ』
歌仙は寿の様子を察して、手短に通話を終了させた。
412人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りなほ@受験生(プロフ) - ありがとうございます(`・ω・´)私自身青江クラスタなのでそう言って頂けるとホントウレシィ… (2016年12月18日 0時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
腐り始めた豆腐 - ↓青一江じゃないです。アオーエです。 (2016年12月17日 20時) (レス) id: 20ecaa2ed9 (このIDを非表示/違反報告)
腐り始めた豆腐 - もう……本当にこの小説大好きです(笑)寿も東も夢主も大好きだぁー!!東の本丸の青ー江が好きすぎる。更新楽しみにしてます! (2016年12月17日 20時) (レス) id: 20ecaa2ed9 (このIDを非表示/違反報告)
りなほ@多忙(プロフ) - この話は割と寿中心なのです( ˇωˇ )トラブルメーカーェ…グラサンは大爆笑でした (2016年11月1日 23時) (レス) id: 762ecccfb8 (このIDを非表示/違反報告)
白鶴(仮)@プリンは犠牲になったのだ - 寿…お馬鹿さんですか、お前は…… グラサンwwそういやそうだったwwwww (2016年10月31日 14時) (レス) id: 064ce5e387 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そると | 作者ホームページ:
作成日時:2016年9月19日 21時