私と君とあの人。【三輪秀次】-完-

17.背中のぬくもり ページ17

side_三輪



他人に対するお礼の言葉など、表面上だけだと思っていた。
だが、名前と出会って、心からの感謝の言葉を今初めて口にした気がする。


三輪「ごちそうさま」

『お粗末様です』


綺麗に完食したお皿を流しまで運ぶ。
名前は自分がやるからいいと言ったが、作ってもらって片付けまでさせるのは些か気が引けた。


流しに置いてあったスポンジに洗剤をつけ、先程まで食材が乗っていたお皿や、調理に使われた器具を洗い始める。


『秀次〜』

三輪「なん、、！」

だ。と言おうとしたが、名前が後ろから抱きついてきた。あまり名前はベタベタしたがらないタイプだと思っていた。
いや、付き合ってから2人になることは帰り道くらいしかなかったのだが、帰り道に手を繋ぐなどもあまりしたことがないからだ。


『秀次、いい匂いがする』

名前は背中の衣服をクンクンと嗅ぐ。

三輪「嗅ぐな。名前も風呂に入れ。」

『う〜〜ん』

とぐりぐり背中に顔面を押し付けられる。

三輪「名前、」

食器を洗う手は止めずに、顔だけ後ろを振り返る。
名前も顔を覗かせる。

三輪「早く行ってこい。」


風呂から上がったらめちゃめちゃに甘やかしてやるから。
名前には言葉にするのは恥ずかしいことは、心の中で強く思えば伝わってくれるから、口下手な自分にとっては好都合だと思う。


『へへ、行ってきます』


チュっと小さなリップ音がして、頬に暖かい唇が触れる。途端に寂しくなった背中に、若干残念な気もしたが、今は洗い物を片付けることに集中しようと頭を振った。

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