〈オリジナル〉殺し屋系グループでドSな相棒が出来たのですが。

冷房の中でひとり ページ9

「…はぁ、あっつ。冷房もうちょい効かせちゃ駄目かなぁ」

「駄目ですからね。ただでさえ赤字だというのに、これ以上お金は使って入られないわ。銃の補充に銃弾の購入、ナイフの斬れ味も悪くなってきたと報告を受けてるから＿＿＿」

「ストップ！分かったごめん、俺が悪かった！」


二人の会話を右から左へ流している中、私は普段より座高を高くしてソファーに座ることくらいしか出来なかった。
その間にも、カチャカチャとパソコンのキーボードが沈む音が聞こえる。

これは説明待ちをするしかないと判断した私は、朝焼いてもう冷めているであろうトーストのことを考えていたりした。


「大体 夏は我が儘過ぎる。一組織のトップという自覚はあるのかしら？」

「あるある。でもリーダーちょっと暑すぎて溶けるかも」

「安心しろ真夏、墓ならいつでも予約取れるから」


かなり不謹慎な会話だが…突っ込むつもりもない。
外と比べれば室内は随分涼しいから、汗も引いたし、あまり出しゃばれないのが事実だ。

「惠くん。予告動画の解読は？」

「ああ、今終わりましたよ。どーぞ」


パソコンを彼女の方へ向けた眼鏡の彼は、飽きたように机の上のお菓子を頬張った。
見間違えでなければ、何か、菓子にかける筈のない調味料＿＿ソースらしきものをかけてから。
意外とチョコソースだったりするんだろうか。
…ここからでもお好み焼きだとかにかけるソースの匂いがするが。


「ふぅ……本格的に動かなければいけないようね。ええと、名前なんて言ったかしら」

『あ、双葉Aです』

「双葉さんは組織に加入するってことでいいわね？悪いんだけど任務が入ったわ」


私の前に立ち、優しく告げた彼女。
悪いんだけど、とは、私が入ったばかりだけどという意味だろう。


「……あ」


思い出したように呟いた一文字に、肩を揺らした。
目の前で座っていた萌え袖の彼が鼻で笑う。



「自己紹介、してなかったわね」



…それって、私が名前を言ったときに気づけばいいんじゃないだろうか。

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