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数刻ほど待った頃
白ひげ船が上陸した
イゾウはやっとか、なんて愚痴りながらタン、と軽い音を立てて乗り込む

「A、ちゃんと親父に言うんだぜ?」
「あっはは。流石に言うよ
犬猫じゃないんだから」

船が上陸してからずっと私の足にしがみついているシアンの頭を撫でながら
振り返ったエースに笑いかける
因みに「生き別れの妹」設定はもう冗談として彼に話してある

「ったく、お前がいるとうちの家族が増える一方だな」
「節操がないみたいに言わないで
私だって気に入った子しか紹介してないわよ」
「はははっ!そりゃ失敬」

エースは笑って言う
相変わらず太陽みたいな笑顔だ
変わっていなくてホッとする

一足先にストライカーに乗って乗船したエースを見届けてシアンの目線に腰を落として膝をつく

「シアン、貴方を連れて海に出ようと思うの
それでいいかしら?」

海の色をした綺麗な目を覗き込む
汚れを知らない綺麗で真っ直ぐな大きな瞳

言葉が通じないのなんて知っている
ただ言わなくてはいけないと思ったのだ
例えこの先乗せる先の船が崩壊すると分かっていても…。
何もしないなんてできなかった
一人取り残すなんてできなかったのだ

とんだ偽善者である

自虐じみた思考にフッと笑むとシアンが徐に口を開いた

「おじょう」

初めて

初めて彼女が言葉を発した

ーお嬢ーという言葉を
イゾウが何度も言っていたのを覚えたのだろう

まだ拙い幼子のような言葉でも私はぎゅっと心臓を掴まれた感覚になった

固まる私を他所にシアンは自分に指を向けた

「おじょう?」

コテンと首を傾げて言う様にクスリと笑った

「いいえ、貴方はシアン」
「しあん?」
「そう。私はお嬢
シアン。お嬢。シアン、よ」

彼女の細い指を私とシアンの間を往復させる
口の中で言葉を練習しているのが愛らしい

「おーい!A。何やってんだ!?出港しちまうぞ!」
「はーい!!」

頭上から降ってきたサッチの声に返事をした
それから、シアンを抱き上げ翼を出す
物珍しいのかシアンが肩越しに翼を触ろうとしていた
赤ん坊のような行動にまた頰が緩む

二、三回シアンの頭を撫でて船に乗った

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味噌 - どうなるんでしょうか!?気になりますね!! (2019年9月15日 22時) (レス) id: f946edc931 (このIDを非表示/違反報告)
味噌 - これからも頑張ってください〜 (2019年9月11日 6時) (レス) id: f946edc931 (このIDを非表示/違反報告)
味噌 - アアアアア来るなとは、サッチの悲劇のことです。勘違いされていたらすみません・・・・ (2019年9月8日 17時) (レス) id: f946edc931 (このIDを非表示/違反報告)
味噌 - はい!ぜひ!    アアアアア来るな・・・・ (2019年9月6日 22時) (レス) id: f946edc931 (このIDを非表示/違反報告)
アイリス(プロフ) - 味噌さん» 長らくお待たせいたしました!あ、作品作ったんですね!暇がある時に見に行かせていただきます (2019年9月5日 19時) (レス) id: 7e8dc5ebed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くるクラ | 作成日時:2019年8月4日 14時

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