【3年A組】Espoir 2 - 卒業 - (ページ50)

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99話ページ50

茅野「ねぇ、A…何してるの？」

『ん…なかなか一颯が起きないから、一颯からの課題やろうと思って』

宇佐美「え、先生からの課題出てんの？」

『うん、柄を1枚仕上げて…提出すること。期限は一颯が死ぬまで』

茅野「何描くの？」

『うーん……私のヒーローかな』

宇佐美「それってガルムフェニックス？」

『ガルムフェニックスは確かにヒーローだけど違うよ？』

私が香帆やさくらと話しながらキャンバスに絵を描いていると

先生の胸ポケットに入ってるケータイが鳴った。

ちょうど下描きを終えた私は先生の横に座り、

胸ポケットに手を伸ばす。すると、その腕が先生に掴まれた。

『え、起きた』

柊「生きてるからな。そりゃ、目覚める」

そう言った先生は、"S"…相楽さんからの電話に出た。

マイボイのコメント受信音が多くなったということは、そういうこと。

柊「はい」

相楽≪体の方は大丈夫かい？≫

柊「えぇ、なんとか」

『すこぶる快調だよ』

私がしゃべると手で口を塞がれた。

……私も相楽さんと喋りたい。これが最後な気がするから。

相楽≪A、嘘は行けないよ。それより、予定より早いけど礼の動画をアップした。
警察が来てるんだ。これから出頭する≫

柊「そうですか……すいません」

相楽さんが警察に行く。

ということは私以外の協力者が全員捕まったということだ。

田中さんは……大丈夫でしょ。郡司さんは黙っててくれそうだし。

相楽さんが警察に行くということは文香さんはどうするんだろう。

今更、私が行くことは出来ない。

私もこれが終われば、先生と一緒に出頭する。

生きてるうちに、本当のお姉ちゃんに会いたかった。

そう思いながら、少し目に涙を浮かべるとさくらが

澪奈からもらったハンカチで拭いてくれた。

私には私のヒーローがついてる。

私を救ってくれた、私に幸せをくれたヒーローが。

私は、先生と相楽さんの会話をしばらく黙って聞いていた。