【3年A組】Espoir 2 - 卒業 - (ページ16)

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065話ページ16

『先生、水越さんって昔水泳部だったんでしょ』

柊「そうだ。それがどうかしたか？」

『なんで辞めたんだろう』

柊「さぁな……」

私は前に帰り際、泣いている水越さんを見たことがある。

“どうしたの？”

“なんでもない”

“なんでもないのに泣いてんの？”

“っ……好きだったもの取り上げられたの。それだけ”

そう言って去っていった水越さんは校門のとこで中尾君と帰っていった。

茅野「失礼しまーす。夕飯取りに来ましたぁ」

柊「そこの段ボール」

『あ、私と先生の分置いといてね』

茅野「A、大丈夫？……って、あーっ！それ女子トイレ…盗撮じゃないですか」

夕飯を取りに来たさくらは先生が見ているモニターを見て声を上げた。

私は、まさかモニターに女子トイレが映っていたとは思わず、ゆっくり起き上がった。

それをさくらが支えてくれる。

柊「洗面所だけだ、静かにしろ」

茅野「水越さんと結城さん、なにしてるんですか」

『え、水越さん？』

先生は、茅野さんの質問にモニターの音量を上げた。

私とさくらはモニターをのぞき込む。

水越≪魁皇高校3年A組元水泳部の水越涼音です≫

『動画…？』

水越≪私は水泳部の顧問、坪井先生に執拗なセクハラとパワハラを受けました。私に付き合っている男性が居ると分かった途端、水泳の練習にも参加させてもらえず、隊部に追い込まれました

きっと澪奈も同じ目に遭ったんだと思います。フェイク動画を作ったのは、坪井先生に間違いありません≫

『あっ……待って、違う』

茅野「え？A？…てか、止めなくていいんですか？それとも、坪井先生が犯人なんですか？先生はどこまで知ってるんですか？澪奈を追い込んだ犯人を知ってるんですか？」

柊「質問が多いな。一つに絞ってくれないか」

茅野「じゃあ、先生の目的は犯人を捕まえることですか？」

柊「俺の目的…そして、Aの目的は、その先にある」

うん。まぁ、確かに私と先生の目的は犯人を捕まえたその先。

すると立ち上がった先生に向かって先生の眼鏡をかけたさくら。

茅野「私は先生を信じてますから」

『あ、さくら貸して私も』

茅野「ん？はい！」

さくらは、私に眼鏡を渡してから段ボールを荷台で持って行った。

扉が閉まってから先生は私の方を向く。

『ｺﾎﾝ……私も先生のこと信じてますから』

柊「そうか、Aにもそのゲームの話はしてなかったな」

そう言って先生はまたモニターの前に戻る。