【3年A組】Espoir - 卒業 -

008話 ページ9

『前もって言ってよね……』

柊「リアリティーが必要だったからなぁ……ゾクゾクしただろ？」

『まぁ、先生に殺されるならいいかもとか思っちゃったかな』


私は準備室から出てキャンパスに向き合って色を塗り始めた。


柊「Aの目的、把握してるつもりではいるけど……もっかい聞かせてくれるかな？」

『あれ？私言ったっけ』

柊「俺が調べただけだ。てことで答え合わせ」

『なるほど。私の目的は―……』


私の姉が数年前に自 殺した。

原因はマインドボイスに投稿されたフェイク動画だった。

ある教師に関係を迫って行為に及んだという非現実的な内容。

それがネットでバッシングされ、ありもしない……身に覚えのない出来事の誹謗中傷に耐えかねた姉は自 殺した。

姉の死をきっかけに私たち家族は変わってしまった。

母親は引きこもるようになり精神を病み、

父親は会社を辞め、酒に溺れ、私や母に暴力を振るうようになった。

その時の傷跡は背中やわき腹、太ももなど至る所に残っている。


そしてある日、学校を終えた私が家に帰ると

そこは血の海。地獄絵図だった。

家具や小物は散らばり、床には母と父が横たわっていた。

近所の人が言うには、口論する声と母の絶叫が外にも聞こえていたらしい。

ただ、いつもの夫婦喧嘩だろうと無視したと。


ただ、実際は……精神を病み、父の暴力に耐えきれなくなった母が

リビングにいた父を刺し、暴れた挙句の果てに自らも首を切って自 殺したというものだった。


『私は、私たち家族を壊した犯人を知りたいの』

柊「知ってどうする」

『しっかり罪を償わせる。ホントは犯人探しなんてしようとしていなかった……でも、ある人の死で変わったの』

柊「それが、景山澪奈……」

『そう、澪奈は私の1年生の時からの大事な友達だった。そんな澪奈が自 殺した。姉の人生を狂わせた方法と同じ、フェイク動画で』

柊「なぜ、同一犯だと？」

『姉もここの生徒だったの、そして3年の時に自 殺した。どうも偶然とは思えなかった。

それから色々調べたの。澪奈の死をきっかけに私は、姉の死に向き合うことが出来た。』

柊「それで？犯人の目星はついたのか？」

『なんとなくだけどね……ただ、証拠がない』

柊「なるほど、俺の予想はだいたい当たったというわけだ」


先生は話しながら絵を描き続ける私に近づいてきて、そっと後ろから抱きしめた。

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