好物頂上決戦【月島 蛍】

勝負の行方。 ページ45

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『バレーに費やしてきた時間も経験も違う。僕がウシワカに勝てるわけない。


…ただ、何本かは止めてやろうと思ってるだけ』






何日か前に、月島が零した言葉。

ぎゅっと胸が締め付けられるような思いだった。





「うそ…うそ、月島、すごい…！止めた！」




私はまだ試合が終わっていないのにポロポロと涙を零した。



よっしゃあぁぁ！と叫ぶ月島は、今まで見たことのないくらい、嬉しそうだった。




「…ブロックがあると意識させることが向こうのセッターへのプレッシャーになったんだ」

「…意図的、ですか？」

「そう。蛍はずっとそれを待ってた」





我が弟ながら恐ろしいよ、と笑う明光さん。


くるりと月島がこちらをジッと見つめてくる。







「(…ちゃんと見てるよ、大丈夫)」




私は涙を拭いて、笑顔で見つめ返した。





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三セット目は、あっという間。

向こうのセッターは持ち直したようで、前のセットより調子が良いように見えた。

結果、18-25でセットを取られてしまった。







ここを取らなければ終わりの四セット目。

烏野にとって、未知の領域。


二セット目同様、いい勝負が出来ている。

3枚ブロックのタイミングもバッチリで、完全に止めることは出来ないけど、対処はできている。





「うぅ〜…」

「ひっ、(人1)ちゃん…顔怖いよ…」

「あ、ごめん仁花ちゃん…応援席ってこんな遠かったんだな、って思って…」

「そうだね…」




遠くから見守ることしかできない。声もかけられない。

仕方のないことだけど、もどかしかった。






「…亀野さん、ありがとう」

「えっ、何がですか」

「蛍のこと。ずっと見てくれてたんだろ？」





私は口をつぐむ。どうやらお兄さんには伝わってしまったらしい。




「…最初は、ただ憎いだけだったのに。何だか、放っておけなくなって。

お節介だ、って言われたこともありました。ムカつくからやめようと思いました。

…でも、出来なかった。大丈夫だよ、って言いたくて」



そうしたらいつの間にか、後戻り出来ない気持ちまで抱いてました。




そう俯いて言う私に、明光さんは安心したように笑った。







「君の気持ちはちゃんと蛍に伝わってるよ」

「本当ですか…？」

「うん。だって昨日すごい大事そうに持ってたよ、お守り」







ピピーッとホイッスルが鳴って、第四セットが終わった。


29-27。







勝負の行方は、第五セットへ。

指の怪我と保証。→←経験値の違いは明白。

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