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「…今の、よくなかった?」
「そう、だな…」
ストリート音楽とはまた違う雰囲気で綺麗に重なった音に冬弥は驚いていた。
「…凄い凄い!やっぱ青柳くんとやるのめちゃくちゃ楽しい!!」
A幼い子供の様に体で喜びと楽しさを表現する。
「上手く言えないけど、青柳くんとやるといつもよりいい感じで弾ける!」
「俺も、江夏とだといつもより声が伸びる様な気がする」
そうなの?とAは音楽室の椅子に座る。
「いつもが手を抜いている訳では無いんだがな…」
「そういえばストリート音楽やってるんだよねぇ」
冬弥もその隣の椅子に腰掛けた。
「ああ。今のとはまた違った雰囲気があって楽しい」
「そうなんだ〜。私のいとこもストリート音楽やってるんだよ」
「そうだったのか。なら、どこかで会ってるかもしれないな」
「だね〜。そうだと面白いけど」
セッションが終わった後はAセッションの感想を語り合ったり雑談をして過ごす。
冬弥の話をにこにこと楽しそうに聞くAに冬弥は思わず笑みを溢した。
すっかり冬弥はAと居ることに心地よさを感じていた。
決して自分からは深く踏み込まず、相手のペースに合わせて話を聞くAには、思わず自分の本音を零してしまいそうになる。
「…あ、ごめん青柳くん。今日用事あるから先帰るね!」
いつも下校時間になると玄関まで一緒に言っているので、Aは冬弥に声をかけた。
「ああ、分かった。じゃあまた」
「うん!またね!」
Aは腕を大きくぶんぶん振って走り去った。
冬弥は閉まっていく音楽室の扉をただじっと見つめる。
「…俺も、帰らなければ」
しばらく見つめた後、冬弥は音楽室を後にした。
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作者名:レノ | 作成日時:2022年5月7日 23時