空の檻 ページ20
夜、冬弥はトークアプリでAに連絡をする。
『次に出るイベントが決まったから明日チケットを渡してもいいか?』
送ってすぐに既読がつき、返信が来た。
『おっけー!じゃあ明日また音楽室で!』
『OK!』とまた犬のスタンプが送られてくる。
料金の話などをした後、疲れていた冬弥はすぐにベッドに横になり眠りに落ちた。
「____て」
誰かの声がする。それはどこかで聞いたような、聞き覚えのある声だった。
「__きて、____や」
「起きて、冬弥」
鮮明に聞こえたその声で冬弥はハッと目を醒ました。
眼前には清々しい青空が広がっている。
ゆっくりと起き上がると、そこは眠ったはずの自室ではなく、どこか別の場所だった。
「(…夢か?)」
いつの間にか自分の服装が寝衣から私服に変わっていたことから、これは夢だと冬弥は考える。
ぴちゃり、と自分の下から音がしたので下を向くと、そこには自分の顔が映っていた。
そっと手を伸ばし、冬弥はそこに触れる。
ぴちょん、と映った顔が波打った。
どうやら地面一帯に薄く水が張られているようだが、不思議なことに水に触れても冬弥の手は濡れなかった。
先程までその地面に寝ていたはずの背中も全く濡れていない。
立ち上がって辺りを見渡してみると、そこは実に神秘的な空間だった。
どこまでも続く青い空と、その空を映す水面。
まるで、空の中に閉じ込められているかの様。
何かに導かれる様に、冬弥は歩き始める。
ただ真っ直ぐに。
しばらく歩くと、少し風景が変わった。
遠くに、背を向けて立つ誰かの姿が見えた。
その背中に近づくと、段々声が聞こえてくる。
「…♪〜〜」
「♪ーーーー、♪〜〜〜」
この声を、冬弥は知っている。
「…やっと会えたね、冬弥」
その背中はゆっくりと振り返り、冬弥を見た。
その顔に、冬弥は目を見開いた。
「…ミク?」
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作者名:レノ | 作成日時:2022年5月7日 23時