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放課後、今日は吹奏楽部の活動は無いため、いつもなら音楽室に向かうはずの冬弥だが、今は教室から動けずにいた。
昼休みの光景が頭から離れず、冬弥は悶々としていた。
「(…何故、頭から離れないんだ)」
相棒がただ友人と話していただけなのに。
最近親しくなった自分の友人が相棒と話していただけなのに。
冬弥の脳内にAのいたずらっ子の様な笑顔が浮かぶ。
「(江夏のあんな顔は初めて見た。その顔を見せた相手が俺ではなく彰人だったことが…)」
そこまで考えた冬弥の思考は、扉が開いた音により掻き消された。
「あ、いた!青柳くん!」
幸か不幸か悩みの種であるAが教室に入ってきた。
「江夏…?」
「今日、来なかったから…」
いや、毎回来るって話じゃなかったけど!と、冬弥の席に近づき、机の前でしゃがみ込んで顔を覗き込むA。
「昼休みのこと、怒ってるかなって…」
「(…怒っている?)」
悩んではいたが怒っていた訳ではないのでAにその節を説明する。
「え、てっきり私が割り込んじゃって話が出来なかった事に怒ってるのかと…」
「話はあの時既に終わっていたからな。それに話しかけたのは彰人だろう」
「た、確かに!…なんだそっか〜」
冬弥の机に力無く頭を伏せるAを見て、冬弥は不思議に思って訪ねた。
「怒っていると思ってたのか?」
「うん…。怒らせちゃったって授業中ずっと考えてた」
授業中ずっと。
その言葉に冬弥は胸があたたかくなるのを感じた。
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作者名:レノ | 作成日時:2022年5月7日 23時