天才科学者の憂鬱

9-彼女の存在1(空助) ページ10

*



“女は預かった。返して欲しくば要求を飲め。期限は3日後”


そう書かれた手紙と、金属に囲まれた部屋に縛りつけられた彼女の写真。

……遅かったか。

こんなに早く行動に移すとは思っていなかった。
もっと早く予測していれば…なんて、考えても遅い。

3日後、か………。

場所に目星はついている。助ける方法もあるにはある。

だが………


「………面倒だな…………」


…そもそも、彼女は勝手に研究室に入り浸っていただけで、赤の他人だ。それに、彼女がどうなろうと、僕には何の関係もない。



***


3日後―――


「おい」

「…あれ、楠雄。どうしたの？」


背後に立つ弟に、振り向かずに声をかける。


ーー……どうしてこんなところにいるんだ

「…楠雄、何怒ってるの？声が聞こえないから、わからないよ」


僕を睨む楠雄に向かって、ははっと笑う。
仕方ない。キャンセラーをつけているんだから。


ーーAさんを……助けに行かないのか

「………あぁ、なるほどね。それで僕のところに来たんだ？
別に、僕と彼女は他人だし、彼女がどうなろうと知ったことじゃないよ。
…まぁ、楠雄にとっては大切な友人だし…そこまで言うなら楠雄が助けに行けばいいんじゃない？簡単でしょ？」

ーーお前が行かなきゃ意味が無いだろ！！

「ちょっとちょっと、そんなに怒らなくてもいいじゃない〜
…言いたいことは何となくわかるけど…僕は行く気はないよ。僕には関係ないしね」



*

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