月に恋せよ暦ガール 【4】

月恋 第181話 「夏休みと蝉の鳴き声」 ページ39

衝撃的な体験をした夏祭りが終わり、七夕も7月もあっという間に過ぎて、蝉の鳴き声が彼方此方から響いてくる8月がやって来た。

「「夏休みだー!!」」

学校も漸く夏休みになり、私と恋さんは自分達の学校の終業式が終わった後、寮にてその嬉しさのあまり万歳からのハイタッチ。

「A、僕たちといっぱい遊ぼうね?」

「はい、勿論そのつもりです!」

普段学校の無い涙兄は私や郁兄が夏休みに入ったと聞くや否や、キラキラと瞳を輝かせていた。

急遽変更があり、ロック系から音域的に高音が多くあり、私にとっては非常に歌いにくい可愛い系の曲へと大幅に変えられた私のデビュー曲もまあまあ売れ、ドラマも好評。そのお陰でバラエティー番組やトーク番組、音楽番組からオファーが来るようになり、仕事も軌道に乗り出した。そのため、夏休みだろうと忙しく働くことにはなるが、学校が無いだけでも幾分か時間に余裕が出来るのだ。

部活の大会もあるけれど、東京に来て初めての夏休み。楽しみたいものである、と心をウキウキ、弾ませていたのも束の間。

「そう言えばAちゃん、夏休み、実家に帰る予定とかある?」

「えっ?」

夜さんの一言により、一気に見たくない現実へと引き戻され、鬱な気分へ。

夏休み、8月の第一日曜日。父さんから一度帰って来いと言われていたのだ。

すっかり忘れていたと私は思わず頭を抱える。

帰るべきか帰らないでおくべきか、非常に迷うところ。帰れば必ず父さんに怒られるし、帰らなくても怒られる。どちらにせよ、自分がアイドル活動を行っている限り、父親との衝突を免れることは決して出来ない。究極の二択である。

「父に8月の第一の日曜日には帰って来いと言われているので、帰るつもりです」

お盆も近く、母のお墓参りもあるため一回は帰るしかないと私は腹を括った。

父さんは置いといて、母さんのお墓参りは絶対にしたい。掃除もあるし御線香も立てなくては、と帰るついでに買っておくべきものを頭の中に思い浮かべながら春さんに返事をした。

月恋 第182話 「謎のカピバラさんスタンプ」→←月恋 第180話 「発端の原因の一つ」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す