月恋 第179話 「浴衣に込める」 ページ37
夏祭りの後、寮に帰ってからグラビの共有ルームでゲーム大会を行い、散々はしゃいで遊んだその夜更けのこと。
喉が渇き、ふと目が覚めた。
ふらりとベッドの中から抜け出し、自室に設置されている冷蔵庫を開けてみるも、冷たい空気が自分を包むだけで中身は空っぽに近かった。
共有ルームに行けば、何かしらあるだろうとプロセラの共有ルームへと足を向ければ、扉の隙間からうっすらと光が漏れていたのである。
こんな時間に、自分以外の誰かが起きているのか?と首を傾げる。大方、どちらかと言うと夜型の涙辺りだろうと予想し扉を開ける。
「やあ、海」
すると其処にはソファに座り、優雅に本を読む我らがプロセラリーダー、隼の姿があった。
「何だ隼、お前も起きてたのか」
「少し目が覚めてね」
いつもこの時間帯にはぐっすり眠っている筈のこいつが、目が覚めてしまったとは珍しいこともあるものだ。
意外に思いながら、共有ルームの冷蔵庫を開け、自分の名前が書かれているペットボトルの水を取り出してから彼の隣に腰掛ける。
「ねえ、海」
「んー?」
「初恋の君とは会えたかい?」
「ごほっ!!」
隼の斜め上過ぎる予想外な発言に驚愕し、思わず飲んでいた水を吹き出しかける。お陰で水が気管支へと入っていき、勢いよく噎せるはめに。
「Aが突然俺達からはぐれたり、神社の境内から人がいきなり消えたり、あの子が俺の前に姿を見せたりしたのは隼、もしかしなくともお前の仕業か?」
白き魔王様と呼ばれるこいつならやりかねん、と俺は隣でにこにこ妖しげな笑みを浮かべる隼にジトリとした疑いの目を向ける。
「やだなぁ、海ってば。僕はそんな野暮なことしないよ。今回は本当に」
僕だってAとはぐれたと聞いて慌てたんだよ?とにこにこした笑みから一変し、いつになく真面目な顔で返してくる隼。
確かに、何時もは何が起きても焦らず余裕そうなこいつが、今回はAが俺達とはぐれたと聞くやいなや、随分と焦っていたし、やけに動揺していた気がする。
「ところで海は、浴衣の柄に一つ一つ意味があることを知っているかい?」
「意味?」
浴衣の柄は色々あるが、それに意味が込められていると言うのは初耳である。それを耳にし、そう言えばAが着ていた浴衣は燕が描かれていたな、と思い出す。
「もしかしてAが着ていた浴衣の柄にも意味があるのか?」
気になって隼にそう尋ねると、今度は意味深な笑みを浮かべて「勿論さ」と答えた。
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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時