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月恋 第177話 「黒き王様のレアショット」 ページ35

「Aー!!」

「うぎゃぁっ!」

海さんと話終えて、漸く元に戻った参道へと戻った。皆さんが待っている鳥居の前まで行くと若干目に涙の膜を張らせた駆兄が私に向かってタックルを噛まし、その勢いにのって力強く抱き締めてきた。

「見付かって良かったー!!」

他の人達と比べると小柄で細身だと言うのに、なんと言う力だろうか。彼の両腕に力が入るたび、 背骨がミシミシミシッと嫌な音を鳴らす。やばい、骨折れる。

「待って待って駆、Aが潰れる! 抱き締める力弱めて。まじでAが青白い顔してるから!!」

「え、あ、ごめん!」

「いえ、だいじょうぶです………」

段々血の巡りが悪くなり、青白くなっていく私の顔色を見た恋さんが慌てて相方を止めに入る。

「すみません、ご心配お掛けしました」

恋さんの忠告を受け、力を弱めるも余程不安だったのか私を抱き締めることは止めず、駆兄は鼻をグスグスと鳴らしながら、ずっと私に引っ付いたままである。その様子から、ああ、心配させてしまったのだなと改めて実感した。

「兎も角無事で良かった。何処か怪我は無いか? 変な人に声を掛けられたりはしなかったか?」

始さんが少し膝を曲げて、自分の目線を私に合わせて矢継ぎ早にそう聞いてきた。珍しく動揺した姿を見せる始さんに、私はびっくり。

その問い掛けに答えることなく、ポカンと口を開けて思わず唖然としてしまった。まさか始さんからそんな事を聞かれるとは思ってもいなかったし、彼が焦った様な、今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべていただなんて思っても見なかった。

「えっと………怪我はないですし、声を掛けられてもないです」

「始、始、Aちゃん驚いてるからちょっと落ち着いて。あと、顔が近いよ。
ごめんね、Aちゃん。海からAちゃんとはぐれたって電話貰って、始ってば凄い勢いで神社を探し回ってたんだ」

「春、それはお前も同じだろ」

「まあね」

春さんの話を聞いて私は更に驚き、目を見開いた。

春さんによって私から引き剥がされた始さんの額には、うっすらと汗がかかれている。黒の王様と名高い彼が誰かを探すため、その決め細やかな肌に汗をかくほど走り回っていたなんて誰が想像しただろうか。

月恋 第178話 「ちょっと言えないかな」→←月恋 第176話 「夏祭りと七夕が繋ぐ」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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