月に恋せよ暦ガール 【4】

月恋 第171話 「赤い髪飾り」 ページ29

「えっと、こんばんは?」

此方をじっと見詰め、一言も発することの無い少女。淡い桃色の浴衣に身を包み、茶色のふわふわと柔らかそうな短い髪には赤い椿髪飾りをつけている。

取り敢えず声を掛けてみると、大きな瞳を細めてふにゃりと可愛らしい笑みを見せてくれた。

「あなたも一人なの? お父さんとお母さんは?」

少女の視線に合わせるよう、膝を軽く曲げて屈む。そして誰と来たのかを問い掛けるも、ふるふると小さく首を横に振られてしまった。

「じゃあ、お友達と来たのかな?」

そう言うと、少女はパアッと瞳を輝か首を縦に振った。どうやら当たりみたいだ。

「そのお友達ともしかして、はぐれちゃった?」

またこくり、と少女は首を縦に振る。

「お恥ずかしながら、私も迷子なんだ。良かったら一緒にお友達を探さない?」

一人よりも二人の方が良い。そう思って少女に提案してみると、またもや彼女はコクコクッと頷いたのである。

そうと決まれば話は早い。女の子は一緒に来ていた筈のお友達を、私は海さんと駆兄をこの状況から一緒に探しだすことになった。

少女のやけにひんやりとした小さな小さな紅葉の様な手を優しく握り、誰も居なくなってしまった神社内を歩き始めた。

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