月に恋せよ暦ガール 【4】

月恋 第169話 「的屋の髪飾り」 ページ27

突然のペア組み発言に、それぞれが少し驚いた声をあげるも、確かにこの人数でこの人混みの中を行動するのは無理があるなと瞬時に理解し、いつの間にか用意されていたクジをそれぞれ引くことになったのである。

結果、くじ引きの発案者である隼兄は始さんとペアが分かれてしまいショックを受けていた。始さんの浴衣姿と言うこともあり、テンション高く興奮していたためか落差が激しい。

ペアは別になってしまったけれど、始の浴衣姿を持ってきた一眼レフに収めなきゃ、と言う神様の御座す神社にてされた欲望に忠実過ぎる発言は聞かなかったことに。

かくいう私はくじ引きにより、海さんと駆兄とペアと一緒である。因みに他の面々は隼兄と恋さん、始さんと涙兄、春さんと郁兄、 夜さんと新さん、葵さんと葉月さんと言った普段では珍しい組み合わせ。これも公平にくじ引きで決める楽しさの一つさ、と隼兄が満足そうに笑った。

20時にはまたこの場に集合することで、一旦解散。各自で祭りを楽しむことに。

「じゃあ行くか!」

「「はい!」」

海さんに私と駆兄は元気良く返事をし、小柄である私達の前を歩き、人でごった返した神社の道を歩きやすくしてくれる海さんの後をちょこちょこと雛鳥の様に付いて行く。

ある程度屋台を回ったところで海さんが、「おっ」と声を上げて足を止めた。突然歩みを止めた海さんの視線を辿り、その先にあったのは的屋。

「駆、A、少しやってかないか?」

そう言われ、私も駆兄も面白そうだと言わんばかりに目を輝かせ頷いたのである。

父が買い食いに良い顔をしなかったため、あまり夏祭りにも行かなかったし、的屋などで遊ぶのは此れが初めて。

嬉々と射的を持ち、台の上に置かれた景品に狙いを定めて撃っていく。

集中力と命中力には自信があり、全弾狙った景品にヒットさせて見事お目当てのウサギのぬいぐるみと最近流行りのゲーム機を手に入れる。此れには的屋のおじさんにも、見ていた海さんにも、隣で同じく射的を構えていた駆兄にも驚かれた。おじさんには恐れ入ったと当てた景品を手渡され、駆兄にはコツを教えて欲しいと頼まれる中、凄いなー!と頭をわしゃわしゃ撫でてきた海さんの笑顔に違和感を覚えたのである。

そして海さんは違和感のある笑顔を浮かべた後、的屋の景品の1つである綺麗な髪飾りを瞳に映し、懐かしそうに、寂しそうに目を細めたのであった。

そんな何時もと違う様子の海さんを前にし、私は困惑を隠しきれずにいた。

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