月恋 第163話 「予想通りである」 ページ21
グギギギキッと音を立て、隼兄と攻防戦を繰り広げるも、結局私の手首をがっちりと掴んだ彼の手からは逃げることが出来なかった。無念なり。
「で、何を思い付いたんですか?」
もう逃れられないと諦め、私は再び彼の隣に座る。そして矢張り上機嫌丸出しの笑顔を浮かべる隼兄に問い掛ける。すると隼兄はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに笑みを深め、口を開く。
「明日、この近くで夏祭りが行われるんだ」
「お祭りですか?」
私の地元でも夏になるとよく近所の小さな神社でお祭りが行われ、観光客も訪れて充分な賑わいを見せていた。東京ともなると、もっと賑やかなのだろうなと想像する。
しかし、夏祭りと我々の休みがどう関係しているのか。隼兄のことだから、此れから何を言い出すのかは容易に想像が出来るから怖い。
絶対、夏祭りへ皆で行こうとか言い出すぞ。
「皆で夏祭りへ行こう!」
隼兄は笑みを崩さずして、一言告げた。
流石は隼兄、予想通りである。
「断固拒否!」
私は間髪入れず、その誘いを断った。
えー、何でー?と口を尖らせ、不満を溢す隼兄にジトッと呆れた視線を向ける。
「グラビとプロセラが集まって行動したら目立つし騒ぎになるじゃないですか」
確かにグラビとプロセラ合同で遊びに行くのは非常に楽しそうだが、12人もの美形が集まって行動すれば自然と周囲の注目を浴びてしまうのである。騒ぎになるし、単純にお祭りを楽しみたい人達に迷惑が掛かってしまう。
「それに私も同行するのは、どうかと思いますよ?」
私も付いていくことになると余計騒がしくなってしまうのだ。主に、グラビ、プロセラガチ勢(過激派)が黙っていない。
自分の好きな男性アイドルが、例え事務所の後輩であったとしても女性と出掛けているなんて知ったら複雑な気持ちにしかならない。
私だって愛さんに男の影がちらついた途端、荒れる自信がある。恋さんと一緒になって。
「只でさえ、皆さんのそばでお仕事してる上に寮が一緒だと言うことで、私の存在をあまり良しとしていない方も居るんです。その様な方達を刺激するような行動はしたくありません」
きっぱりと断言する。
女性でも私を応援してくださる方は沢山居る。それにともなって、私を疎ましく思っている方も居ることを忘れてはいけない。
「詰まり、目立たず見付からなければ良いんだね?」
「はい?!」
私の話を聞き終えた隼兄は弾んだ声でそう言った。どうやら、彼には何か策があるようだ。
月恋 第164話 「流石としか言いようがない」→←月恋 第162話 「たった数ヵ月であれど、学ばされたことは数多く」
154人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時