月恋 第145話 「高熱」 ページ3
「え、マジっすか?」
「嘘言ってどうする。額に手ェ当ててみろ」
もう芝居は終わったと言うのに、顔がまだ赤いまま。元気がない様子のA。
「えー、葉月さんセクハラー」
「うるせェよ。誰がセクハラだ」
何時も通り生意気な口を利いてくる割には抵抗する手の力が弱いAに対し、更に違和感を覚える。
彼女の抵抗する手を無理矢理払いのけて額に自分の手を当てた。
彼女の額から俺の手にじんわりとAの体温が伝わってくる。
低体温で何時もはひんやりと冷たい彼女の額。それが今日はどうしたことか、真夏の太陽に当てられた様に熱くなっていた。
「熱は測ったのか?」
「朝に少し」
大ちゃんの問い掛けにAは苦笑いを浮かべ、あやふやな返事をする。
いや、少しじゃ何も分かんねェよ。
「その時は何度だったんだよ」
「37度くらい?」
俺が問い掛け、彼女が答えると同時に少し目が揺らいだ。それを俺は見逃さず、直ぐに彼女の嘘だと気付く。
「本当は?」
「…………」
「正直に言ってみ?そしたらこの前発売した愛ちゃんの缶バッジ買ってやる」
口をつぐむ彼女に止めの一言。
Aは愛ちゃんの話題に弱い。それを俺は知っている上で上手いこと利用したのである。
今も愛ちゃんと名前を耳にし、ピクリと肩が跳び跳ね大きく反応を示した。
「愛さんの缶バッジ…………38.9であります隊長」
大好きで仕方がない愛ちゃんの缶バッジの誘惑に負け、Aは渋々と言う感じで白状した。
意外にも熱が高くて俺も大ちゃんもびっくり。
「誰が隊長だ。つか、38.9は全然少しじゃねェよ! 高熱じゃねェか! だ、大ちゃん!」
「ああ! もうAの出番は終わったし、監督にも許可を貰ってきた。A、撮影よく頑張ったな! 帰るぞ!」
「え、あの、黒月さん?!」
Aのスクールバックを片手に持ち、空いたもう片方の腕でAを軽々と持ち上げる大ちゃん。その姿は最早お父さん。
「陽、後で迎えに来るからな」
「サンキュ、大ちゃん」
社会人の大ちゃんに掛かれば、中学生のAも勿論高校生の俺もまだまだ世話の焼ける小さな子供と言うわけだ。
Aは気が抜けたのか、大ちゃんに抱えられた状態で眠ってしまっていた。
此処まで頑張ったAに、プリンでも買って帰ってやるか。次いでにプリンが大好きな涙の分も買っていこう。
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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時