月恋 第162話 「たった数ヵ月であれど、学ばされたことは数多く」 ページ20
「ねぇ、A」
ドラマの影響力のお陰か、アイドルとしての知名度も着々と上がり、つい最近出したデビュー曲の売れ行きもそこそこ良い7月上旬。
織姫と彦星が年に一度だけ会える貴重な日、七夕を明日に控えた日曜日に私は、プロセラの共有ルームで隼兄に声を掛けられた。
「明日の予定は何かある?」
「予定ですか?………特にこれと言ってありませんよ?」
不意に明日の予定を訪ねられ、一体今度は何を企んでいるのやらと小さく首を傾げ、彼の言動を怪しみながら手元にあった手帳を開いて明日の予定を確認する。
そして珍しいことに、明日は学校以外、仕事の予定も部活の予定も友人と遊ぶ予定も無かった。詰まりは暇。
最近、有り難いことにトーク番組やバラエティ番組からのオファーがよく来るようになり、デビューしたての頃が嘘のように忙しくなりつつあるのだ。だから、ちゃんとした予定が何も入っていない日は久し振りかもしれない。
「そう、それは良かった。実は明日ね、グラビやプロセラも仕事がお休みなんだ」
「えっ?!それはまた珍しいこともあるんですね」
ゆったりとした口調で話しながら、プロセラとグラビの共有ルームを繋ぐ突き抜けの螺旋階段付近に立っていた私に此方へ来い来いと手招きをし、自分の隣に座るよう促す隼兄。
彼の言葉を耳にし、驚きながらもそれに従ってすとんっと彼の隣へと腰を下ろした。
グラビとプロセラ、そして私の休みが被るのはもしかするとこれが初めてかもしれない。仕事で皆一緒になる、と言うことは数多くあれど休みが被ることは基本珍しい。
グラビが仕事でプロセラが休み、と言うこともあればそのまた逆もしかり。ちょくちょく個人での仕事で、グループの誰かが休みで違う人は仕事だったり、私だけがいなかったりすることが殆どだったのである。
それが今回、全員が休みとは、本当に意外な事もあるものだ。
「そこで僕は思い付きました!」
私が未だに驚いていると隼兄が途端にニッコニコ、意味深な笑みを浮かべ出した。
あ、これは嫌な予感がする。
隼兄が上機嫌で意味深な笑みを浮かべている時は大抵ろくなことがない、と私はこの数ヵ月の間でよく学ばされた。
厄介なことを言い出す前に退散しよう。
「あー、私、ちょっと急用が」等と適当なことを言ってソファから立ち上がるも、隼兄にがっしりと右手首を捕まれ逃亡失敗。
お綺麗な顔に似合わず物凄い握力ですね、とその力強い彼の手に、思わず私は真顔になった。
月恋 第163話 「予想通りである」→←月恋 第161話 「梅雨の日の思い出」
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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時