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月恋 第155話 「境界線」 ページ13

「下がってる」

翌日の午前7時のこと。私はベッドの上で一人、体温計とにらめっこをしていた。

体温計に表示された数字は35.3度。昨日の高熱が嘘の様に下がっているのだ。これで学校にもドラマの撮影にも無理せず行ける。実に喜ばしいことである。

昨晩、飲み物を買いにコンビニへ足を運び、そこで恋さんと駆兄とばったり遭遇。どういう流れか恋さんに背負われながら帰ることになった。その途中でいつの間にか私は眠りこけてしまったらしく、半分記憶が無い。

けれど二人に迷惑を掛けてしまったのは事実。後で謝りに行こうと心に決めた。

顔を冷たい水で洗って歯を磨く。クローゼットを開き、其処から見慣れた制服を取り出してパジャマから着替える。その一連の流れを終えて漸くプロセラの共有ルームへと向かった。

「おはようAちゃん。もう体は大丈夫?」

プロセラの共有ルームに行くと、もうそこには朝食の準備をしている夜さんの姿があった。相変わらず夜さんは起きるのが早い。

「はい、もう大丈夫です。色々ご迷惑をお掛けしたみたいで、本当にごめんなさい。それとアイスクリーム、ありがとうございました」

淡い黄色のエプロンに身を包み、ふわり、綿飴の様に柔らかい笑顔を浮かべる夜さん。彼から発せられるお母さんオーラに、何処か安心感を抱きつつ、迷惑を掛けてしまったことの謝罪とお礼を口にしてから軽く頭を下げた。

幾ら夜さんが優しくて、お母さんの様でありお兄さんの様であっても彼は矢張り仕事先の先輩であり他人。夜さんだけでなく、他の皆さんにもそういった区切りはしておくべきである。

「………Aちゃん、俺達は別に迷惑だなんて思ってないよ。だから謝らないで?」

下げた頭を上げて夜さんの顔を見た。

彼は何故か先程の柔らかい笑顔とは売って変わって、今度は淋しさを含んだ笑みをしていた。

私はその意図が分からず、首を小さく傾げる。

はて、私は何か彼の気に障る様なことを言ってしまったのだろうか。それならば直ぐに謝らなければならないのだが、その何かが分からない。

「あの、夜さん?」

原因が突き止められず、淋しそうな笑顔を浮かべたままの夜さんに恐る恐る声を掛ける。夜さんは、ハッとして勢いよく首を横に振った。

「何でもない! えっと………アイスクリーム、美味しかった?」

「はい、とっても」

そして話題を変えられ、結局あの淋しそうな笑顔の理由を教えてもらうことは出来なかった。

月恋 第156話 「事の経緯」→←月恋 第154話 「誤魔化している」



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櫻餅(プロフ) - ♯鈴音色♭さん» コメント有難う御座います!お話だけでなく夢主までも好きだと言って頂けて嬉しい限りです。また少しずつですが更新していきたいと思っておりますので、続編も宜しくお願い致します! (2018年11月5日 18時) (レス) id: c0a9d4f092 (このIDを非表示/違反報告)
♯鈴音色♭(プロフ) - 桜餅さんおかえりなさいです! このお話も主人公ちゃんも大好きなので、続編お待ちしています!! (2018年11月5日 17時) (レス) id: b160fc2e68 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - 深海さん» 返信が遅くなってしまい申し訳無いです。朏さんとのお話は自分も楽しく書いていたので、そう言って頂けて大変嬉しい限りです。中々更新が最近出来ていませんが頑張って行きたいと思います。コメント有難う御座いましたm(__)m (2018年8月27日 20時) (レス) id: fb6a326e77 (このIDを非表示/違反報告)
深海(プロフ) - 読んでいてとても楽しくなりました。特に朏さんの辺りの話が好きです。これからも楽しみにしています、更新頑張ってください。 (2018年8月25日 0時) (レス) id: 5947186a26 (このIDを非表示/違反報告)
ピヨコ - 丁寧に教えてくださって有難うございます。成程、私も試してみます。これからも頑張って下さい。応援しています。 (2018年8月4日 9時) (レス) id: 0464d791fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:櫻餅 | 作成日時:2018年4月15日 23時

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