ウラオモテカノジョ～あざとい女の子はきらいですか？～【1】 (ページ47)

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それは少しだけ、緊張がやわらいだ瞬間だった。ページ47

ラジオ番組にあまり出演したことのない私が、今季のアニメである「訳ありな僕らの恋愛事情」のラジオ、「訳ありな僕らのぶっちゃけラジオ」にゲストとして出演することが決定した。しかも……梅原さんと。

パーソナリティに内田ご姉弟がいてくれるから、2人きりというわけではないため、その辺りは大変助かっているのだが、若干苦手意識のある梅原さんと出演すること自体が憂鬱で仕方がなかった。

出来れば喋り慣れている鈴木くんと出演したかったのだが、私が演じるヒロインの弟の山井麗と、梅原さん演じるヒロインの元カレの西園寺力斗は作中、バッチバチに火花を散らしてヒロインを取り合う間柄で。

アニメのなかでも二人が言い争うシーンが何回もあるくらい絡みが多いのだ。だから今回、私と梅原さんのペアでラジオのゲスト出演が決まったと最上さんから聞かされていた。

嫌だなぁ、とは思いつつも、不慣れなラジオ出演でご迷惑をかけることはどうしても避けたい私は、上手いトークの仕方やだいたいの進行の流れを掴もうといくつかの色々なラジオを番組を聞いて勉強してみた。だがしかし、どの人達も話し上手の進行上手で。

経験不足の私には到底、真似することは出来ないと悟りを開いて諦めた。

そんな自信のないままラジオの収録日を迎えてしまった私は、本番直前までガチガチに緊張していた。

「むりむりむりむり」
「Aちゃん、しっかりー！」

始まる少し前。

壁際で縮こまる私を落ち着かせようと、真礼さんが私の背中を優しく擦ってくれるも、バクバク鳴る心臓が静かになることはなかった。

どうしよう。このまま私、緊張したまま一言も話さずに終わっちゃうのかな。

そんな不安を抱きだしたときである。

「ぶぎゅっ！」
「ぶはっ、ブサイク」

突然、梅原さんが私の目の前にやって来たかと思うと、何を思ったのか彼は人の両頬を思いっきり引っ張りだしたのである。しかも自分で引っ張っておいて、ブサイクだとめちゃくちゃに笑い出す始末。

人が緊張しすぎて、精神的に死にそうになっているのにいきなり何をするんだこの人は！

人の気も知らないで！となにか文句のひとつやふたつ、恐る恐るではあるが言ってやろうかと口を開こうとしたのだが……

「うまく話そうとしなくていいから、取り敢えず肩の力抜け」

両頬を引っ張られたままではあるが、そうやって優しく微笑まれてしまい怒る気も、そして緊張も、少しだけやわらいだのであった。