ウラオモテカノジョ〜あざとい女の子はきらいですか？〜【1】

キャラソンを歌わない理由ときっかけ ページ34

私、声優の三ヶ井 Aは歌があまり得意ではない……否、得意ではなかったと言った方が正しいかもしれない。

数年前に1曲だけキャラクターソングなるものを歌ったことがある。しかし、あまりの下手さに若干炎上した経験があるためそれ以来、全く歌を歌わなくなった。

古参ファンの皆様は理由をなんとなく察してくれていらっしゃるようで、歌に関してはなにも触れてこない。けれど最近、そのことを知らない新規ファンの皆様から「ミケちゃんに歌ってほしい」という要望が多く寄せられているとマネージャーの最上さんから聞かされた。

あれから数年、真綾さんや久野ちゃん、それから事務所の先輩である香菜さんに付き合ってもらいながら猛特訓をしてようやく人様にお聞かせできるレベルにはなったのだが、自分のなかではまだ自信がない。

基本、アンチファンの批判的な言葉や評価などは全く気にしないし何を言われても私は私なので痛くも痒くもない。

ただ私が一番、恐れていることはキャラソンを歌うことにより、私の声によって命を吹き込まれている大切なキャラクターのイメージが損なわれることである。それだけは絶対にあってはならないことだと、歌を歌うことを控えてきたのだが……

「歌ってみた？」

私が歌わない事情をよく知っている最上さんから突然、顔出し一切なしの匿名で歌を歌ってYouTubeに投稿してみよう、と提案があったのだ。

「流行りの曲から懐メロまで！色んな歌を歌って、少しでも多くの人に聞いてもらって、ちょっとずつ自信をつけていかない？あ、もちろん事務所からはもうすでにOK貰ってるから安心してね！」

匿名で投稿するからこそ、偏見なしの意見がたくさんもらえるかもしれないから、と最上さんは全力で歌い手活動(仮)を推してきた。

「え、でも……」
「久野ちゃんも、このこと伝えたら応援してるって言ってたよ！」
「やる！！！！！！！」
「声でっか」

それでも、と渋る私に最上さんは久野ちゃんの名前をさらりと出してきたのであった。

ひ、卑怯だぞ！！！

意外とご近所さんであったことを初めて知った。→←ラーメンが食べたい2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す