本当はずっと怖かった ページ9
センターが過去に紫城に行った実験は
痛みを与えることだけでなく
膨大な情報だった
どこまで何を知ればきっかけとなるのか
どこまでの傷で引き金になるのか
なんでもいい
能力の発動条件とその大きさ、正確さ
紫城の力を見定めるために、どれだけ彼に傷がつけられたか
アンナの前では話したくないと言った紫城に
アンナは素直に下に降りていき
自分のことについて事細かに吐露した
それは
紫城の覚悟だった
痛みを与えられることで“石盤”に近付いたのは事実であったが
紫城がそれに触れることは無かった
単純にその資格がなかった
肌を焼かれた
強制的な視覚情報から
聴覚情報
感覚的な情報
ありとあらゆる情報を可能性として与えられたことが
紫城が優秀である理由だ
覚えなくてはならないことを覚えただけで
それが当たり前になった
資料から
本人の説明から
3人はおおかたの紫城の能力を把握した
紫城は自身への致死傷外に関しては
ほぼ確実に回避出来るということだ
それはある意味で、強力な能力だ
「能力の安定ってあるけど
それは?」
「…安定するよ。
なんとなく、それはわかってる。
だから
俺、能力を使いたくなかった。
普通になりたかった。
親しい人を作りたくなかった。
この力の制御。
もしもその予想が当たっているなら
俺は、それを望まないから」
ぎゅっと握り締めた拳が震えた
「怖かったんだ。
俺、望んでここに入ったのに。
俺のせいで吠舞羅に何かあるのが怖かった。
だからキング。
もしも
もしも俺の存在が吠舞羅にとって危険になったなら
お願い。
その前に俺を、ちゃんと“燃やし尽くして”」
苦しげに
それでも真っ直ぐと周防を見つめて放たれた言葉に
思わず草薙と十束は息を呑んだ
周防は紫城の瞳を見つめ返し
それから面倒そうに息を吐いた
「面倒は引き受けねえ」
「…うん、でも。
それでもきっと、キングはやってくれる。
だってキングは優しいもの」
下手くそな笑みを浮かべた紫城に周防はただ眉をひそめるだけだった
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作者名:鍵宮 | 作成日時:2019年7月9日 19時