【K】戒告のインディペンデント【男主】 (ページ36)

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ハッピーバースディページ36

十束の死はすぐに通達された
アンナの誕生日パーティは行われず

身内のいない十束の弔いは
吠舞羅のみで行われた

冬の海

追悼を終えて
周防によって、灰すらも遺さずに燃え
誰しもが、涙を流した

周防の耳についたピアスは見覚えのあるもので
以前よりも赤いそれは
空洞に何が入っているか明確で

そして、これから吠舞羅の行うべきことも明確だった

バッサリと
髪を切った紫城は、肩につく髪先をいじりながら
バーのソファに座るアンナの横に腰を下ろした

「アンナ、ごめんね。
俺、ちゃんと教えてもらってたのにね」

「シジョウは、何も悪くない」

「ははっ…そう？
…アンナ、今年のパーティは流れちゃったけど

これだけは、渡しておきたいんだ」

アンナへと差し出されたのは紫城の端末で
動画の画面が開かれている

指先で再生をタップしたアンナの瞳には
どう画面が映っていたのだろう

「…きれい」

「十束からの、誕生日プレゼント」

映し出された“キャンドル”の光る町
そうだ
十束はそれを、撮りに行っただけ
アンナを喜ばせたかっただけなのに

アンナは何も悪くないよ、と頭を撫でて立ち上がった紫城だったが
すぐにその場に膝をついて
苦しげに息を吐くと左肩を抑えた

「紫城、どないした？」

カウンターにいた草薙が慌てて近付く
幸い、今日のバーは閑散としていた

触れようとした草薙は
その左肩を中心に、血が滲んでいるのに気づく

すぐに服を脱げ、という草薙に紫城は首を振る

「アンナ、すまんけど上に行っとってくれるか？」

大人しく頷いたアンナが2階に消えてもなお
紫城は服を脱ごうとせず
痺れを切らした草薙が強引に服を捲りあげて

後悔した

「紫城…これ…」

ああ、どうして
どうして、気付かなかったのだろう

きっと予兆なんて、いくらでもあったはずなのに

紫城の左の肩甲骨よりもやや肩寄りに、彼の徴はある
それよりももう少し右
肩甲骨の場所に、深い切り傷と雑な火傷痕

鎖骨の物と同じだった

何も言えず
まともな治療もされていなかったそれに、治療を施した草薙

紫城は、一言も口を開かなかった

「(紫城、お前…)」

それを、自分の役目だと
戒めにしているのか

伏見の時も同じ様に

徴と同じ場所を焼いて
自分の罪を忘れない様に

「見なかった事にして下さい」

そう笑った彼に
草薙は、彼に背負わせるものの重さを実感した