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本当はずっと ページ33

アンナの誕生日を翌日に控えたその夜

珍しくバーのカウンターで眠ってしまった紫城を起こそうと思う者はいなかった
目に見えて隈が濃くなるのを見てきていたから
少しでも眠れているならと思ったのだろう

明日の昼までは周防がアンナを2階に引き止め
その間にパーティの準備となる


「じゃあ俺はちょっと用事済ましがてら帰ろうかな」


「用事?なんかあるんか?」


「うん、実は巨大ケーキを用意してて…


ってのはできなかったけどさ
この前一緒に“キャンドル”の光見たでしょ?
あれ、まるで街全体がでっかい誕生日ケーキで、そこに灯る蝋燭みたいだと思ってさ

誕生日プレゼントってほど大層なモンじゃないけど
明日アンナに見せたくて」


そう言う十束に
草薙も納得して、周防の表情も柔らかい


「紫城、起こさんくてええんか?」


「寝かせておいてあげてよ。
明日怒られるかもしれないけどさ」


「そか。
気ぃつけて帰りや」








「うん、また明日ね!」









『ねぇ、A。俺、約束ってあんまり好きじゃないって話したことあったっけ?』


『…ううん、知らない。
嫌いなの?』


『苦手なんだろうね、縛られるのが得意じゃないのと…なんだろう?』


『なにそれ。でも自由なお前らしいね。
ふぅん…でもいいよ。俺が一方的に思ってるだけ。
行くって言ったら、俺絶対に行くから』


それはいつかの会話だ
約束が苦手だと言った十束に、紫城はそれでいいと言った
別に約束なんてなくても、紫城は十束を見つけられる自信があったし
縛りたいわけではなかったから


十束が約束が苦手な理由のもう1つがなんだったのか、紫城にはわからなかったけれど



多分、おそらく、紫城と同じだったのだろう


約束を守ってもらえることが、少なかったから



『A、ごめん』

















ガタンッ


唐突に立ち上がった紫城の額から流れ落ちた汗がカウンターを濡らした
転がったスツールが大きな音を立て
カウンターに手を着いて俯いた紫城の顔色は真っ青だ
僅かに吐き出された息が乱れ
慌てた様子でバー内を見渡した紫城


「A、どうした?」


不審気に問いかけてきた八田に
紫城は何度か口を開き
それでも震えて声にならない喉に、大きく息だけを吐き出した


そして、やっと





「とつか…」




震える声で
その名前を呼んだのを合図に
草薙の端末が鳴り響いた

心の奥底で→←訪れる運命の日は



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作者名:鍵宮 | 作成日時:2019年7月9日 19時

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