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奮った力はいつだって ページ30

壁に背を預け、深く息を吐き出した紫城は
そのまま座り込む

乱れた呼吸を整え
僅かに痛む拳を撫でつけた
その頬には返り血が付いており、少し路地裏に入れば何があったかなど簡単にわかる惨状が広がっている


「は…はぁ…」


じわり、じわりと浮かび上がる炎に
紫城は手を組み必死に呼吸を整える


少しでも気を抜けば、簡単に溢れだしかねない力を抑え込み
紫城は耳を塞いで情報を遮断する


伏見から情報処理を教わっても
未来を見る力はちっとも安定してくれなかった
むしろ、“その日”が近付くにつれて酷くなるばかりだ

人の会話を聞くだけで様々な情報が流れ
景色を見るだけで映像が脳裏をちらつき
寝てしまえば夢としてみるその日

望んでいない未来視
それは、多分、その日が来るまでの代償で





「A」


聞こえた声に顔を上げた紫城は
その姿を視認して、力を抜いた


途端
溢れ出した炎が
紫城を囲む様に張られた

“青い光”によって相殺された





「…ありがと、伏見」


まだ、紫城と伏見は隔週で1度会っていた
これは宗像からの指示ではない
既に無効となった決まりの後もこうして会っているのは

暴発する紫城の炎を
伏見が相殺する為である

隔週
それだけ我慢すれば、紫城の炎が誰かを傷つけることは無い


十束に頼まない理由は
紫城自身が理解出来ている


「(もし、もしも…未来が変えられなければ)」


もしもその日が本当に訪れてしまえば
頼れなくなるから


「今日はどうするんだ」


「…少し、歩きたい」


立ち上がった紫城は、ズボンをはたいてフードを深く被る
ごしごしと袖で返り血を拭い
歩き出した伏見の背中を追う

紫城と会う日
決まって伏見は私服だ
緊急の時は制服となるが、それ以外はわざわざ休みの日に合わせている

伏見がそれを断ったことは、1度もない
宗像な気付いているだろうが、特に何も言わない


「お前、飯は」


「2食は食べてる、一応」


「睡眠は」


「2、3時間くらい…」


「俺と会う日以外で外に出るのは」


「1日5時間までで…2日、くらい」


恒例となった問いに答え
その返答に伏見は言及はせず相槌を打つだけ

代わり映えのしない問いと答え

これだけのことが、とても大切なのだ


顔を隠しているのは吠舞羅のメンバーと会った時のことを考慮して
伏見に付き添って外に歩くのは
情報量で限界を迎えた時、相殺させてもらうため


出来損ないだと、彼は自嘲した

手離す覚悟と調和→←それはとても幸福な



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作者名:鍵宮 | 作成日時:2019年7月9日 19時

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