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それはとても幸福な ページ29

「アンナが俺のカメラの趣味気に入ってたなら
今度またああいうカメラ買おうかな」


結い終えた髪から紫城が手を離せば
アンナはきゅっと唇を引き結び十束に飛びついた
大きな水しぶきを上げて2人揃って海へと倒れ込むのをみて、少しだけ、紫城の表情も和らいだ



その夜の事だ
この辺りは出るらしい、と言う情報から
洞窟へと向かった一行

しかし、そこにいたのは幽霊なんかではなく
亡くなった子供の友人の少年で


「写真とか映像とかってさ
その時の記憶や想いをその場に留めるものだろ。
幽霊ってのも、つまりそういう存在じゃん。

生きている時の思いを留めた存在。


…あそこには、幽霊なんかいないよ」


その子に幽霊でもいいから会いたかったと言った少年に
十束はそう語った

とんだ散歩になったなと帰りながら言った草薙が
十束は幽霊の話に乗っていたから信じているのかと思ったが、信じていないのだなと言えば
いたらいいなとは思うけどねと笑った


「もし俺だったら
…死んだ後も、その場所にいられたら幸せだろうと思ってさ。
けど幽霊って

見たいと思うから見えるだけで
死んだ人そのものは関係ないのかもしれないね」


ぞわりと紫城の背中に走ったのは
得体の知れない恐怖だった

足を止めた紫城が十束の背中を見つめ


十束ははしゃぐメンバーに向けて指を構えた


カメラを連想させるそれに
十束の声に振り返ったメンバー


「…なにしてんだ」


「ちょっと、心のシャッター切ってみました」


朗らかに笑う十束の後ろ姿に
紫城の拳が強く、握りしめられた


「A、どうかした?
置いていっちゃうよ」


ズキズキと酷く頭が痛んだ
呼吸の仕方を忘れそうだった













『俺は幸福だったよ』





「なんでも、ない」


するりと横を抜けた紫城

この半年
あの日から、紫城は少しずつ変わった

口数が減った
笑うことが減った
ぼんやりしていることが増えた
目の下の隈が濃くなることも多い


「(未来は、変えられる…はずなんだ)」








久しぶりの更新ですみません、停滞します
昨年はありがとうございました、今年ものんびりですが、よろしくお願いします

展開が駆け足です

奮った力はいつだって→←夏の夢



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作者名:鍵宮 | 作成日時:2019年7月9日 19時

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